バンブーズブログ

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[社説]将来展望できる少子化対策に


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/6 19:00
 
再開したこども未来戦略会議。3兆円の負担のあり方で再配分の効果が変わる(2日、首相官邸
政府がこども未来戦略会議の議論を再開した。新たな少子化対策の具体策を年末までにまとめる。年3兆円超の追加費用をどう賄うか、負担のあり方で再分配の効果は変わる。若い世代が将来に展望を持てる対策にしてほしい。

政府は児童手当や育児休業給付の拡充などを盛った「こども未来戦略方針」を6月に決定した。今後、予算を段階的に増やして2026年度には年3兆円台半ばの追加予算を確保するとしている。

戦略方針では財源として「新たな支援金制度」の創設を掲げた。国民が納める医療保険料に少子化対策に充てる費用を上乗せして徴収することを想定している。

ただ、社会保険料は所得に応じて負担額が決まる仕組みで、現役世代の負担が重くなりやすい。育児世帯の支援に要する費用を育児世帯から集める構図になれば、児童手当など再分配の効果は相殺されてしまう。高齢者も含めて広く負担する仕組みが必要だ。

政府は医療や介護など既存の社会保障制度の改革で国民負担の増加を抑え、支援金制度による負担増を相殺する方針を掲げている。高齢化による社会保障負担の増大は、若い世代が出産に慎重になる一因でもある。効率化や負担と給付の見直しなど、聖域なき改革が求められる。

財源とあわせ、中身を深掘りすることも欠かせない。例えば、政府は「共働き・共育ての推進」を掲げ、男性の育休や育児期の柔軟な働き方を後押しする方針だ。

若い世代の経済基盤を安定させるうえでもプラスだろう。ただ、職場全体の長時間労働や女性に偏る家事・育児分担などの是正にもっと切り込まなければ、安心して両立できる見通しは立ちにくい。

「男性は仕事、女性は家庭」を前提にした仕組みは、労働慣行だけでなく、税・社会保障制度でも続いている。30年までが少子化対策のラストチャンスであるなら、給付やサービス増といった対策だけでなく、こうした根本の課題に踏み込む覚悟が必要だ。