バンブーズブログ

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[社説]結婚や子育ての希望かなえる前提整えよ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/28 19:05
 
結婚や子育てをしやすい環境整備は急務だ
2024年を少子化対策に正面から向き合う「元年」とできるか。政府も企業も一体となって全力で取り組むべきだ。

政府は23年末、「こども未来戦略」を閣議決定した。核となるのが24年度からの「加速化プラン」だ。12月支給分からの児童手当の拡充や、25年度からの多子世帯の大学無償化など、最初の3年でメニューの大半を実現させる。年間3.6兆円規模であり、子育て支援は大きく前進するだろう。

ただ、若い世代が安心して結婚・子育てできる前提条件が整わなければ、現金給付やサービス増の効果も弱まる。若い世代の希望を阻む根本的な要因に、もっと強く踏み込まねばならない。

まずは、経済基盤の安定だ。未来戦略も「若い世代の所得を増やす」としているが、将来に明るい見通しがなければ、家族を持つことをためらってしまう。いったん非正規になると抜け出しにくい硬直的な労働市場の改革や賃上げ、処遇改善、能力開発など多面的な措置が必要である。

かつて団塊ジュニア世代による第3次ベビーブームが期待されたものの、バブル崩壊就職氷河期の影響も受けブームは起きなかった。経済運営の巧拙は少子化の問題とも密接に関わる。

企業に関しては、子育てに時間を割きにくい古い雇用慣行を特に見直したい。加速化プランは、男性の育休促進や短時間勤務への給付新設などを盛り込んでいるが、周囲が残業続きではキャリアとの両立に不安が残ろう。

若い世代は共働き志向が強まっている。職場全体の長時間労働の是正などを急いでほしい。

根強く残る男女の役割分担意識を、どう見直すかも大きな課題だ。女性の正規雇用比率が30歳代から下がる「L字カーブ」や、先進国のなかで突出して偏る家事・育児分担がその表れだ。収入減やワンオペ育児への不安は、結婚・出産への大きな壁になる。

若い世代の経済的基盤の安定と、働き方・意識改革は、これまでの少子化対策でも繰り返し指摘されてきた。しかし、進捗は鈍い。税や社会保障のモデルも今なお「サラリーマンと専業主婦」を前提としたままだ。

長年にわたる少子化で、親になる世代は大きく減っている。少子化対策は、時間との競争だ。危機感を共有し、社会全体で環境整備を急ぎたい。