バンブーズブログ

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社説]ルネサスが示す買収の巧拙


 
 
#半導体 #社説
2024/1/17 19:00
 
トランスフォームのプリミット・パリク最高経営責任者と握手するルネサスの柴田英利社長㊨
半導体大手のルネサスエレクトロニクスが同業の米トランスフォームの買収を決めた。ルネサスは海外企業の買収を繰り返して事業の厚みを増し、それをテコに収益力と成長力を取り戻した。

米国などでは当たり前のM&A(合併・買収)を基軸とした成長戦略が定着すれば、日本の企業社会のダイナミズムが増すだろう。ルネサスダイキン工業のような買収巧者を先達として、各企業はM&Aの腕を磨いてほしい。

産業革新機構の傘下で経営再建を進めたルネサスは不振事業のリストラにメドをつけ、財務に余裕のできた2017年ごろから積極的な買収戦略に乗り出した。

これまでおよそ1.8兆円を投じて米インターシルや英ダイアログなど自社にない技術を持つ半導体企業を傘下に収め、顧客基盤や製品の幅を広げてきた。

トランスフォームの買収額は3億3900万ドル(約500億円)とそこまで巨額ではないが、パワー半導体の次世代材料として有望視される窒化ガリウム(GaN)に強みを持ち、電気自動車(EV)向けの強化が期待できる。

買収の魅力の一つは人材の獲得だ。ルネサスのシニア経営陣は被買収企業出身の幹部がほぼ半数を占め、国際色豊かだ。人事の最高責任者はダイアログの出身。生産や調達などオペレーション全般のトップも19年に買収された米社の元幹部だ。相手企業の人材を包摂することで、多様性に富んだ経営チームが自然に形成された。

日本企業はこれまで特に海外での買収に苦手意識が強く、実際に東芝の米ウエスチングハウス買収のような手痛い失敗もあった。

だが、失敗を含めて経験を重ねることで、買収をテコに飛躍する企業も増えている。日立製作所ダイキンソニーグループなど注目企業はいずれも買収をうまく成長戦略に織り込んできた。

自前主義中心だった日本製鉄も米USスチールの買収で合意した。買収の巧拙が企業の消長を左右する時代がやって来た。