バンブーズブログ

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[社説]習近平政権は経済を軽視しているのか


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/17 19:19
 
経済低迷に対する習近平政権の動きは鈍い(2023年11月、米サンフランシスコで)=ロイター
一党体制の強化ばかりに力を注ぎ、苦境にある経済の立て直しは二の次と考えているのではないか。中国の習近平政権に対して、そんな疑念をぬぐえない。

中国の国家統計局が17日に発表した2023年の国内総生産GDP)は、実質で前年に比べ5.2%増えた。

よほど「経済の好調」をアピールしたかったのだろう。李強首相は16日の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で、発表前にもかかわらず「23年の成長率は5.2%前後に達し、政府目標の『5%前後』を上回った」と明らかにした。

実態は数字より悪いとみるべきだ。22年は新型コロナウイルスを抑え込む都市封鎖の影響で、経済が深刻な打撃を受けた。その反動を考えれば、23年の景気は勢いを欠いたといわざるを得ない。

景気が低迷している最大の要因は、不動産業の不振を起点とする需要不足だ。住宅が売れず、家具や家電に加え、自動車やスマートフォンといった耐久消費財の販売が全般にふるわない。

厳しい雇用情勢が消費意欲をそぐ。特に若者の就職難は切実だ。

23年6月分を最後に止めていた年齢層別の失業率の公表を突然再開し、16〜24歳は12月時点で14.9%だったと明らかにした。以前は含んでいた就職活動中の学生などを除いており、継続性を欠く。政府統計への不信は尽きない。

需要不足から、デフレ圧力も高まっている。23年の消費者物価指数(CPI)は前年比0.2%の上昇にとどまった。世界金融危機のあおりでマイナスを記録した09年以来、14年ぶりの低い伸びだ。その結果、名目でみたGDP成長率は23年に物価変動の影響を除いた実質を8年ぶりに下回った。

本格的なデフレを避けるには、足りない需要を財政で穴埋めする必要がある。23年の出生数が7年連続で前年を下回り、人口減への対応も急務だ。しかし、習政権の動きは鈍い。

台湾の総統選挙では「一つの中国」を認めない民主進歩党民進党)の頼清徳氏が勝利した。統一を掲げる習政権は台湾への圧力を強める構えをみせる。

台湾海峡の緊張が高まれば、経済を立て直す余裕はなくなる。中国の需要不足は世界経済にも大きな影響を及ぼす。世界2位の経済大国として、習政権にはその自覚を持ってもらいたい。