バンブーズブログ

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[社説]ライドシェア解禁への環境整備を早く


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/25 19:05
 
運転手不足で稼働しない車両も目立つ(日の丸交通の営業所)
タクシー不足問題について政府の対応策が固まった。現行法の例外規定を活用して担い手を拡大するのが柱だ。最大の焦点だった一般ドライバーが有償で旅客を運ぶいわゆる「ライドシェア」の解禁については、2024年6月まで判断を先送りした。

国民や訪日客に安全・安心な「足」を十分に提供するために、政府は新たな法整備を含めてライドシェアの本格導入に向けた環境整備を急ぐべきだ。

現行の道路運送法では、旅客運送には①運転手が第2種運転免許を保有②車両は営業用の緑ナンバー車――など制約がある。普通免許しか持たない一般のドライバーが自分の車で人を運んで対価を得ることは原則禁じられている。

同法には例外規定が2つあり、国土交通省はこれを最大限生かす考えだ。一つは過疎地などで認められている「自家用有償旅客運送」の拡充で、株式会社の参画や料金の目安の引き上げを認めて供給拡大につなげる。

もう一つは東京などの都市部でもタクシー不足が顕著な時間帯や季節、地域に限って、一般ドライバーによる旅客運送を容認する。ただし個人の自由な営業を認めるのではなく、タクシー会社の指揮下に入り、酒気帯びチェックなどを受けることが前提になる。

業界寄りだった国交省が、一連の規制緩和に踏み込むのは一定の評価ができる。それだけタクシー不足が深刻で、全国の自治体から「何とかしてほしい」という声が高まっている証しだ。

とはいえ、これだけでは不十分だろう。タクシー運転手の高齢化は著しい。日本全体の人手不足に照らしても、タクシーの人員不足がそう簡単に解消するとは考えにくい。例外規定に頼るのではなく、ライドシェアを正面から定義し、本格的に導入するための法制度の検討を急ぐべきだ。

留意すべきは安全の確保だ。運転手や車両の管理をオンラインも活用して効率よく実施する体制を整えたい。乗車中の緊急通報や万一事故が起きた際の補償の仕組みも検討事項となる。客と運転手が互いに評価する相互レビューが、安全やサービス、快適性の向上につながる効果にも期待したい。

運転手の過度な長時間労働を防ぐ工夫も要る。こうした種々の懸念に丁寧に対応したうえで、日本型ライドシェアを実現し、「移動の自由」を確保したい。