バンブーズブログ

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[社説]新党首で共産党は変わるのか


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/21 2:00
 
新党首に就任した田村智子委員長㊨。志位和夫議長も引き続き党運営の実権を握るとみられる(18日、静岡県熱海市) =共同
共産党の党首が23年ぶりに交代し、初めて女性が就任した。世代交代と女性登用で変化を印象づけ、党勢を回復するねらいだ。ただ綱領の全面改定や党名変更といった抜本的な党改革なしに、共産党は変われるだろうか。

4年ぶりの党大会で、国政の前面に立つ委員長に田村智子氏が就任した。四半世紀近く委員長を務めた志位和夫氏は議長に就き、長く理論的支柱だった不破哲三氏は党指導部から外れた。一定の世代交代は進んだものの、志位氏に実権が残る体制といえよう。

志位氏は不破氏とともに社会主義陣営が冷戦に敗れた後、30年にわたって党運営を主導してきた。現実を踏まえた柔軟路線を進め、近年は野党共闘による政権獲得をめざしたが、一時的な国会の議席増はあっても党員は半減した。

米中対立で世界が分断され、日本の安全保障環境が厳しさを増す昨今は世論が保守化し、支持基盤は一段と狭まる。物価高に苦しむ声も、れいわ新選組などにさらわれがちだ。冷戦後の世界に適切に対応できたとは言えまい。

田村委員長は記者会見で「苦しみを抱えながら打開の方向がみえない人がたくさんいる」と支持層の拡大に期待を示した。ただそうした有権者の多くは投票に行っていない。なぜ支持されないのか、改めて直視すべきだろう。

有権者にも野党にも敬遠されがちな要因は、共産主義社会をめざすという現実離れした綱領の全面改定や党名変更を避けてきたことにあるのではないか。

綱領は天皇制と自衛隊を当面容認するが、最終的には廃止を掲げる。中国やロシアの覇権主義を批判するものの、日米安保条約もやめるという。異論を唱えにくい民主集中制という閉鎖的な体質を含め、本当に変わったと有権者が受け止める改革が必要だろう。

政治資金問題で自民党批判が強まるなか、野党が共闘して受け皿になるか否かは、日本の民主主義の成熟度を映す。その意味でも共産党の変化は重要である。