バンブーズブログ

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[社説]能登の産業復興や生活の自立を支えよう


 
 
#社説 #オピニオン
2024/3/2 2:00
 
地場産業の復興に向け、輪島塗の関係者らと話す岸田首相(2月24日、石川県輪島市
能登半島地震の発生から2カ月がたった。被災地はまだ断水が続いている地域が多く、復旧には時間を要している。長引く避難生活では先が見通せるようになることが大切であり、産業の復興や生活の自立を後押しする支援にも力を入れていきたい。

石川県ではなお1万1千人余りが被災地の避難所や遠隔地の2次避難所で暮らす。体調管理が難しい季節にもかかわらず、1月22日を最後に災害関連死が報告されていないのは幸いだ。官民の支援とともに、コミュニティーで支え合う力のたまものだろう。

被災地では中小企業や農林水産業の事業再開に向けた相談会が始まった。被災した事業者の支援策は東日本大震災以降、大幅に拡充された。仮店舗の建設や設備の共同購入などにも助成され、制度はほぼそろっている。

問題は事業者の意欲だ。被災地は「人が戻らないから店を開けない」「店がないから人が戻らない」というジレンマに陥る。福島の原発被災地では店舗や医療機関などの再開を先行させることで住民の帰還を促した。なりわいのないところに人は戻らない。

事業者が再開を決断するには伴走者の役割が重要になる。福島では官民の専門家チームが事業者を繰り返し訪問、対話を重ねて、これならやっていけると納得するまで寄り添った。このノウハウは中小企業庁が引き継いでおり、能登でも生かしてほしい。

こうした復旧・復興の動きが広がれば、有償の作業も増えてこよう。ただ災害による休業で失業給付を受けている被災者は、一定額以上の報酬をもらうと、失業給付が減額、停止されてしまう。

生活の自立に向け働く機会を得ることは避難生活に希望を生み、体調を維持するうえでも重要だ。失業給付を受けたいがために、こうした機会を逸しているとしたら制度の趣旨にそぐわないのではないか。改善の余地があろう。

仮設住宅は時間がかかる。2次避難先となっている石川県の宿泊施設には、3月の北陸新幹線延伸に合わせた北陸応援割の実施後も被災者を受け入れるところもある。協力の広がりに期待したい。

がれきの片付けなどはボランティアの力が大切だ。現状は奥能登との往復に時間がかかり、活動量は過去の震災より大幅に少ない。被災地に寝泊まりできる拠点を拡充し、活動時間を増やしたい。