バンブーズブログ

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能登の復興

[社説]能登の復興像を官民で描こう
 
 
#社説 #オピニオン
2024/3/31 19:00
 
出張開催した輪島朝市は大勢の人出でにぎわい、復興への希望をともした(3月23日、金沢市) =共同
能登半島地震から3カ月。断水はなお解消されず、不自由な避難生活の続く地域が多いが、復興に向けた動きも出始めている。石川県は復興計画づくりを本格化し、6月ごろにまとめるという。

復興は大規模な予算が投じられるため、行政主導になるのはやむをえない。だが、街の再生はそこで暮らしていく若い世代や民間が担ってこそ、地域に持続性が生まれる。官民が歩調を合わせて能登の復興像を描いてほしい。

石川県では今も避難所で暮らす人が約8000人、自宅や親類宅などで避難生活を送る人は1万人を超える。生活再建は緒に就いたばかりだが、将来について考え始めてもよい時期だろう。

発災3カ月を前に石川県は復興計画の骨子を公表した。創造的復興を掲げ、自然と共生してきた能登の魅力を被災前より高めることを目標とする。地方が抱える課題解決のモデルをめざすという。

志はよい。ただ東日本大震災では、自治体が街づくりの専門家とともに創造的復興を掲げながら、絵に描いた餅に終わった計画が散見された。住民が理念を共有できず、ついて来なかったからだ。

これを教訓に、石川県は住民や事業者の声を聞くことを重視し、近くそうした場を設けるという。しっかり耳を傾けてほしい。

民間の側でも復興の議論が始まった。地元の若手経営者らでつくる七尾市の民間団体「能登復興ネットワークいやさか」は、東北などの被災地と意見交換を重ね、復興の知見を学んでいる。

能登の若い世代には自立分散型の地域をめざそうという声がある。孤立しがちな半島部は、生活インフラなどをある程度自己完結させ、経済を地域で循環させる。それによって災害に強く、持続性の高い地域にしたいという。

自立分散の考え方は県の復興計画の骨子にもあり、じっくり議論を深めてほしい。能登が復興した姿を、時間をかけて官民で深く共有することが、結果として創造的復興への近道になるだろう。