バンブーズブログ

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[社説]FRBは利下げ開始の見極めを入念に


 
 
#社説 #オピニオン #金融政策
2024/2/1 19:05
 
パウエルFRB議長は利下げ開始の条件にインフレ減速の継続性を挙げた(1月31日のFOMC後の記者会見)=AP
米連邦準備理事会(FRB)が利下げ時期の見極めに入った。開始の条件に「インフレ率の2%目標への収束に、より確かな自信を得る」ことを挙げ、パウエル議長は「3月までに確信できるレベルに達する可能性は低い」と早期の実施に否定的な姿勢を示した。

判断に慎重を期す姿勢は妥当だろう。歴史的な金融引き締め路線は高インフレの鎮圧へ詰めの情勢判断を残すのみとなったが、新型コロナウイルス禍後の経済・物価情勢は移ろいやすい。政策転換には細心の注意が必要だ。

31日まで開いた米連邦公開市場委員会FOMC)では4会合連続で政策金利を据え置いた。パウエル氏は記者会見で利上げ局面の終幕を正式に表明した。

2022年3月から1年あまりの急激な利上げと昨夏以降の高金利維持のもと、インフレは着実に減速し、FRBが目標に据える物価指標では3%割れが続く。

米経済はFRBが巡航速度とみる1.8%を上回る高い成長率を保つ。労働市場も引き続き堅調だ。パウエル氏は景気や雇用が大きく調整せずにインフレが減速し続けることは可能だとの見方を示し、今後の物価指標などを注視する考えを示した。

その際、インフレの根深さを過小評価していないかの見極めは怠れないだろう。拙速な利下げが物価高の再燃につながると金融引き締めを迫られ、結局は景気を犠牲にするリスクがあるからだ。

反対に過去の利上げの影響がこれから本格的に表れる可能性もまだ消えておらず、景気が急失速する懸念もある。米商業用不動産の市況が低迷するなか、昨春の銀行破綻で浮かび上がった中小銀行の財務体質のもろさも残る。

不測の事態にも柔軟に対応できるよう市場と対話しつつ、備えを万全にしてほしい。「量的引き締め(QT)」と呼ぶFRBが持つ資産を減らす作業でも、圧縮ペースの緩和へ議論を進めるべきだ。

米経済の軟着陸は世界経済の安定成長に欠かせない。国際通貨基金IMF)は最新の世界経済見通しで24年の世界の成長率を昨年10月時点から0.2ポイント引き上げ、前年並みの3.1%とした。米国の上方修正が大きな支えだ。

日銀が賃金と物価の好循環のもと、金融緩和の出口に踏み出せるかにも関わってくる。FRBには景気の軟着陸と物価安定を両立させる最適解を探り当ててほしい。