バンブーズブログ

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[社説]経済安保を支える国際標準の資格制度に


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/17 2:00
 
経済安保にかかわる最先端の技術情報を扱う資格制度の創設が急がれる
日本の安全保障にかかわる経済や技術の情報を守らなければならない。それを扱える人を認定する国際標準の「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の創設を急ぐ必要がある。

政府は近く国会に「重要経済安保情報の保護・活用法案」(仮称)を提出する。サイバーや人工知能(AI)といった最先端の技術分野で、審査に通った有資格者だけが政府保有の機微情報を取り扱えるようにする内容だ。

2014年に施行した特定秘密保護法は、守るべき情報を防衛や外交など伝統的な安全保障の領域に限っている。経済や技術に関する情報は対象としていない。

新法案はこうした特定秘密保護法がカバーしていない機微情報を保護するのがねらいだ。最先端の技術開発では民間企業が前面に立つ。新たな評価制度は公務員だけでなく、民間人の利用も大幅に増えるとみられる。

情報を漏らした場合の罰則は「5年以下の拘禁刑」などとする。特定秘密保護法が定める10年以下の懲役より軽いのは、扱う情報の機密度が防衛や外交といった分野より低いからだ。

新たな制度の創設は、経済界も強く求めている。

主要7カ国(G7)のうち、適格性評価の仕組みがないのは日本だけだ。日本企業が海外企業との協力案件で機微に触れる情報の提供を拒まれたり、軍民両用(デュアルユース)技術に関する会議に参加できなかったりする弊害が出ているという。

制度が整っていないがために、日本企業が国際競争で不利になるようなことがあってはならない。適格性評価はAIなど最先端の技術開発で、官民の情報共有を促す仕組みでもある。日本企業が世界のライバル企業と伍して戦ううえで欠かせない。

もちろん、運用に当たっては細心の注意が必要だ。

秘密を漏らすおそれがないかどうかを確認する審査は、犯罪歴や精神疾患の有無、飲酒の節度、借金の状況にまで及ぶ。あくまで本人が同意した場合のみ調査を始めるが、断ったとしても仕事をするうえで不利な扱いを受けないことを担保しなければならない。

国民の間には人権やプライバシーの侵害につながるのではないかとの懸念が根強くある。こうした不安を払拭する責任が、政府にあるのは言うまでもない。