バンブーズブログ

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[社説]技能実習の轍を踏まない制度に整えよ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/23 2:00
 
政府の有識者会議は技能実習に代わる新制度の素案を示した(18日、東京都千代田区
外国人労働者の受け入れのあり方を検討する政府の有識者会議が、廃止される技能実習制度に代わる新制度の素案を提示した。1年を超す就労など一定の条件を満たせば転職ができるようにする。

技能実習は賃金不払いなどの問題が絶えず、転職が原則できないことで多くの失踪者を生み、人権侵害にあたると批判されてきた。労働環境を改善するとともに、転職を容認するのは当然である。

新たな制度は3年間の就労を基本とする。日本語や技能の試験に合格すれば、2019年に創設した在留資格「特定技能」に移行できる。特定技能と同じように受け入れ人数の上限を定め、対象業種も一致させる。新制度と特定技能を一体的に運用する形になる。

本来は特定技能に統合した方がわかりやすいが、長期就労ができるよう熟練技能者に育成する道筋を示した点は評価できる。

最も重要なのは技能実習と同じ轍(てつ)を踏まないことだ。外国人が日本人と同等に労働者の権利を持ち、活躍できるよう実効性の高い制度に整えるべきだ。

転職は同じ職種に限定し、基礎的な技能検定と日本語試験の合格を条件とした。ハードルが高くなりすぎないよう配慮が必要だ。学習や受験の機会を与えない企業をチェックする仕組みも要る。

外国人受け入れの初期費用を転職先の企業も一部負担する案を示したが、両社が納得できる負担割合を決めるのは難しいのではないか。長く働いてもらえるよう待遇改善に努めるのが本筋だろう。

転職のマッチングは受け入れ窓口の監理団体のほか、監視機関やハローワークが担うという。ノウハウが乏しいため、職業紹介会社の活用も検討する必要がある。

監理団体は企業と癒着するケースもあり、許可を与える要件を厳格にすることが欠かせない。不適格な団体を排除する審査基準を明確に示してほしい。

来日時に支払う多額の手数料が負担となる外国人は多い。素案では受け入れ企業に一定の負担を求める考えを示した。手数料のさらなる高騰につながらないよう監視する必要もあるだろう。

手数料の透明化や海外の悪質な送り出し機関の排除は政府が取り組むべき課題だ。日本語学習や生活の支援は自治体とNPO任せにしてきた。今度こそ政府が前面に立たなければ、働く場として「選ばれる国」の実現は遠のく。