バンブーズブログ

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[社説]継続を選択したインドネシアの民意


 
 
#インドネシア大統領選 #社説
2024/2/21 19:05
 
プラボウォ国防相㊧はジョコ大統領の長男ギブラン氏を副大統領候補に迎え、幅広い支持を集めた(14日、ジャカルタ)=ロイター
インドネシアの次期大統領にプラボウォ国防相が就任する見通しとなった。ジョコ大統領の長男を副大統領候補に起用し、高い人気を保つ現政権の路線継承を訴えて14日の大統領選で支持を得た。

同国は2022年に20カ国・地域(G20)議長国を務め、「グローバルサウス」と呼ぶ新興国・途上国の中心的存在だ。有権者が2億人という世界最大の直接選挙を混乱なく終え、政策が継続されることは、不透明な国際情勢下で前向きな材料といえよう。

憲法は大統領任期を2期10年と定めており、ジョコ氏は10月で退任する。3人が立候補した今回の大統領選は、暫定集計でプラボウォ氏が6割近い票を得ており、当選が確実な情勢だ。

72歳のプラボウォ氏は14年と19年の大統領選に出馬し、いずれもジョコ氏に敗れた。今回は「強い指導者」というイメージを封印し、親しみやすさを前面に押し出した。ペアで選ぶ副大統領候補に、中部ジャワ州スラカルタ市長で36歳のギブラン氏を迎え、若者層の支持も取り込んだ。

ただし圧勝の決め手となったのはジョコ氏への高い支持だ。鉄道や高速道路などのインフラ整備や、未加工の天然資源の輸出を制限して国内で加工産業を育成する「下流化」と呼ぶ政策を推進し、高い経済成長へ導いた。足元のインフレも抑制し、任期終盤の今も支持率は8割前後を保つ。

ジョコ氏が政治遺産と位置づける、過密なジャカルタから新都市ヌサンタラへの首都移転も、プラボウォ氏が引き継ぐ見込みだ。

ただ今回は、憲法裁判所が40歳以上という正副大統領候補の年齢規制を選挙戦の直前に緩和し、ギブラン氏の出馬を可能にした。当時の憲法裁長官はジョコ氏の義弟だった。選挙戦でもジョコ氏の一族がプラボウォ陣営に肩入れする言動が目立ち、公正さを欠くと非難を招いた。退任後も影響力を及ぼす懸念が指摘される。

国軍出身のプラボウォ氏は、かつてのスハルト長期独裁政権期に数々の人権侵害疑惑が取り沙汰された。強権的な姿勢が再び顔をのぞかせる心配も拭えない。

1998年にスハルト体制が崩壊して以降、インドネシアは民主主義を漸進させてきた。この四半世紀の歩みを後退させないため「縁故政治」がはびこるのを防ぎ、国民の自由を守ることが、次期政権に課せられる責務といえる。