バンブーズブログ

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日経平均4万円への道、海外勢の動き


 
 
#豊島逸夫の金のつぶやき #コラム #マーケット
2024/2/22 10:02
日本時間22日6時過ぎに発表された画像処理半導体GPU)大手のエヌビディアの決算は、そもそも今週の米株式市場のハイライト扱いであった。特に、固唾をのみ注目していたのが、ニューヨーク市場の大手投資銀行日本株デスクだ。筆者も、その担当者の一人とライブで話しつつ、決算を見守った。

同社株価の反応は、第一報の段階で前日比マイナス圏であったが、徐々に決算内容が消化されるにつれて、プラス圏に転じ、上昇が6%を超えて加速していった。同時に日経平均先物も史上最高値に接近。その段階で、時間外取引なれど、NYのトレーディングルームが騒然とした様子が伝わってきた。短期筋が日経平均買いに動くとの「忠告」を最後に電話会話は終わった。7時にはエヌビディアの株価上昇は前日比9%を突破していた。

今回も、NY株上昇のモメンタムが、即、日本株株価指数を引き上げ、海外マネー主導の日経平均の急騰を誘発した。特に、エヌビディアの株価に関しては、膨れ上がったオプション取引建玉増加がボラティリティー(変動率)上昇の要因となっている。少額で人工知能(AI)半導体ブームに乗れる手段として、個人も含め多くの投機筋に売買されている。

エヌビディア株を現株価より高い水準で買える権利(コール・オプション)の価格が、例えば、決算発表前には2ドルであったのが、いきなり8ドルに急騰したりする。そこで、たかをくくっていたコールオプションの売り手側は、損失を回避するために慌ててエヌビディア株の買いに走るので、株価上昇スピードも加速する。米国ではSNS(交流サイト)のレディットでやりとりする若者の「レディットマネー」と呼ばれる投機家集団がネット上で結集して特定の株式に集中的なオプション売買を仕掛ける現象が珍しくない。

このような状況で急騰するエヌビディア株に日経平均が強く影響される現象には危うさも感じられる。日本株が外海の荒波にさらされる場面が常態化するのは必定だ。

そもそも、史上最高値更新となると、短期的に理屈より力学が支配するものだ。1兆ドルというような時価総額に膨張したエヌビディア株が、短期間に2兆ドルを目指すような現象はモメンタム(市場の勢い)のなせる技である。

さらに、このモメンタムは日経平均最高値更新を期待する日本市場にただちに伝染する。3万8915円の最高値を超えれば、次は4万円がターゲットになろう。しかし、3万9000円では極端に割高とはいえなくとも、4万円を超えると、さすがにバブル感も強まろう。

それにしても、日本人として悲しいことは、日本株市場が海外勢の投機家たちの草刈り場と化し、日本人個人投資家たちはほとんど乗れていないことだ。新しい少額投資非課税制度(NISA)導入で金融教育があちこちで始まったが、歴史的日本株上昇には間に合わなかった。筆者が初心者向けセミナーで話していても、依然、米国株式などの「外もの」に関する質問が多く、肝心の日本株投資は「怖い」という。

日本人の民族性も見逃せない。筆者が関与した国際投資家調査で、米国人と中国人は「ここまで上がったら、もっと上がる」と見る回答者が多かったのに対し、日本人は「ここまで上がったら、そろそろ下がりそうだから様子を見る」との回答が特に目立った。

日本の機関投資家は、さすがに丁寧に日本株を評価しているが、それでも「よそさんは、どうなんでしょうか」という質問が珍しくない。

オイルマネー日本株を買っている」という話題も引き合いに出される。筆者の出身母体であるスイス系の銀行では、一般的にジュネーブ支店が中東顧客の窓口となっているが、中東の政府系ファンドといえど、ときに短期的な売買を仕掛けていることが特徴だ。そうしたファンドは自ら市場の前面に出ることはまれで、高額報酬の2年契約でウォール街から専門職人材をリクルートして取引している。現場では委託業者への売買発注も含め、ネーティブの英語が飛び交う。さながらウォール街の一部が引っ越してきたかのような光景だ。

かくして、海外勢主導は変わらず、日経平均は4万円を目指すことになりそうだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
 
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
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