バンブーズブログ

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[社説]パキスタンは分断の修復を


 
 
#グローバルサウス #南西ア・オセアニア #社説
2024/3/5 2:00
 
続投するシャバズ・シャリフ首相は経済再建に向けて、政情の安定が急務となる=ロイター
パキスタンの下院が3日、新首相にシャバズ・シャリフ前首相を選出した。選挙管理内閣を挟み、事実上続投する。2月8日の総選挙では政敵のカーン元首相の支持派が最大勢力となった。シャリフ氏の居座りに強く反発しており、国内の分断は一層深まった。

パキスタンはインドや中国、イラン、アフガニスタンと国境を接し、地政学的に重要な国だ。世界5位の人口2億3千万人を抱える核保有国の内政の混乱は、国際社会のリスク要因になる。新政権は分断の修復に努力してほしい。

2月の総選挙(下院選、定数336)は、球技クリケットの元スター選手であるカーン氏が汚職などで有罪となり立候補できなかった。同氏率いる最大野党のパキスタン正義運動も手続き不備を理由に参加を認められず、候補者は無所属で出馬せざるを得なかった。

背後ではカーン氏を敵視する国軍が、司法や選挙管理委員会に圧力をかけたとみられている。

選挙前は軍を後ろ盾とする最大与党、パキスタンイスラム教徒連盟シャリフ派の圧勝が予想されていた。ところが無所属候補が101議席を奪い、シャリフ派の75議席を上回った。シャリフ派は連立工作で過半数を確保し、辛うじて政権を維持した。

意外な選挙結果は、軍の政治介入に民意がノーを突きつけたといえる。カーン氏の支持者は大規模な抗議活動を続ける構えだ。

政情不安は経済再建に影を落とす。同国は中国の支援を受けたインフラ投資の債務負担に、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰が重なり、深刻な危機に陥った。

2022年には国土の3分の1が水没する大洪水に見舞われ、推定300億ドル(約4兆5千億円)の損失を被った。昨年7月に国際通貨基金IMF)から30億ドルの緊急融資を受け、債務不履行(デフォルト)は何とか回避した。

ただし外貨準備は輸入額のわずか2カ月分で経済危機は続く。シャリフ政権は反対勢力と対話し、まず政情の安定を図るべきだ。