バンブーズブログ

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[社説]カンボジアの独裁は目に余る


 
 
#東南アジア #国際 #社説
2023/7/25 2:00
フン・セン首相は野党弾圧を強めてきた(23日、プノンペン郊外)=小林健撮影
23日に投開票されたカンボジア総選挙(定数125)はフン・セン首相率いる与党、カンボジア人民党の圧勝が確定的となった。最大野党を締め出し、民主的な選挙からはほど遠かった。目に余る独裁ぶりといわざるを得ない。

今回は他に17野党が参加したものの、人民党に対抗できる政党はほとんどなく、与党が120議席程度を獲得したようだ。米国務省の報道官は「選挙は自由でも公正でもなかった」と批判した。

カンボジアでは2013年の総選挙で、野党の救国党があわや政権交代かという接戦を演じた。危機感を抱いたフン・セン氏は17年、同党の党首を逮捕して解党処分に追い込み、翌18年の総選挙は人民党が全議席を独占した。

救国党の流れをくむキャンドルライト党は、昨年6月の地方選で2割強の得票があった。ところが申請書類の不備を理由に、今回は選挙参加が認められなかった。

度重なる野党弾圧の背景には近づく世代交代がある。在任38年のフン・セン氏は、長男のフン・マネット陸軍司令官を後継指名している。早ければ8月末の国会で首相の座を禅譲する可能性がある。総選挙で圧勝を演じ、世襲を円滑に進める思惑があったようだ。

フン・セン氏はかつて200万人ともいわれる自国民を虐殺したポル・ポト政権から祖国を解放した立役者だ。1991年のパリ和平協定で内戦に終止符を打ち、荒廃した国土の復興からいまの経済発展へと導いた功績は大きい。

だが近年は強権支配が国内外から非難を浴びている。経済支援を目当てに対中接近し、南部のリアム海軍基地は中国による軍事利用の疑惑が繰り返し指摘される。

日本は93年、初めての総選挙を支援していた文民警察官やボランティアが武装勢力に襲われ、2人が死亡した。あれから30年、和平協定が描いた民主国家の姿がかすむのがカンボジアの現状だ。

最大の援助国である日本は、民主化が再び軌道に戻るよう、粘り強く働きかける責務があろう。