バンブーズブログ

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Apple Car撤退が映す自動運転

[社説]Apple Car撤退が映す自動運転の難路
 
 
#自動運転 #テック #社説
2024/3/8 2:00
 
米アップルは10年にわたって自動運転技術の開発を続けてきた(米ニューヨーク市の店舗)
米アップルが電気自動車(EV)の開発を中止することを決めた。10年ほど前から研究してきた自動運転技術の活用を目指していたが、早期の実用化は難しいと判断したもようだ。

だが、自動運転が安全性の向上やドライバー不足といった社会問題を解決する手段の有力な候補であることに変わりはない。少子高齢化が進む日本ではなおのことだ。アップルの撤退から学び、着実な技術力の向上と社会実装につなげる必要がある。

同社が自動運転の研究を始めたのは2014年ごろのことだ。19年にはこの分野で実績がある米国のスタートアップ企業を買収し、その2年後には韓国・現代自動車などとの生産委託に関する協議が明らかになった。

アップルの米カリフォルニア州当局への届け出によると、23年には同州における公道走行試験の距離が前の年の3.6倍に当たる72万キロメートル超まで伸びた。運転席に座った監視員が事故防止などのために介入する頻度も下がり、技術力は向上していた。

一方で、自動運転には解決すべき課題も残っている。ひとつは価格だ。米アルファベット傘下の米ウェイモは米国で自動運転タクシーを商用化したが、利用車両の価格は1台あたり3000万円に達するとの試算がある。自家用車として本格的に普及させるためにはコスト削減が急務だ。

万が一の事故への対応も課題となる。米国では23年10月、米ゼネラル・モーターズGM)系の自動運転タクシーが人身事故を起こし、当局が対応の不備を問題視して運行停止を命じた。事故防止に加え、緊急時の対応方法をあらかじめ決め、ルールを順守することが求められている。

前提になるのは技術開発や実用化を担う企業による社会との丁寧な対話だ。技術の利点と課題を分かりやすく伝えて理解を深め、社会の受容性を高めることが欠かせない。幅広いステークホルダーと早い段階から連携し、どのような条件が整えば技術を導入できるか見極めることも重要になる。

こうした姿勢は人工知能(AI)の活用で高性能になるロボットやドローンといった製品の社会実装にも欠かせない。生成AIが急速に発達するなか、社会と対話を深めることが技術を活用して産業の競争力を高める近道になると改めて確認したい。