[社説]自動車の脱炭素化とAI対応を着実に
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2024/1/14 19:05
ホンダはテクノロジー見本市「CES」の会場で電気自動車(EV)の新シリーズを発表した(9日、米ラスベガス)
12日まで米ラスベガスで開いたテクノロジー見本市「CES」では、自動車の脱炭素とITで機能を高める知能化が大きなテーマになった。
電気自動車(EV)販売の減速や生成AI(人工知能)の普及で経営環境が変わるなか、日本車メーカーも着実な取り組みで社会的要請に応える必要がある。
ホンダはCESの会場で新たなEV「0(ゼロ)シリーズ」の試作車を公表し、2026年に販売を始めると発表した。韓国の起亜自動車などもEVの試作車を展示した。
脱炭素では欧州車メーカーと関係が深い部品大手の独ボッシュや、韓国の現代自動車が水素の活用強化策を相次いで打ち出したことも注目を浴びた。
こうした動きの背景には脱炭素が喫緊の課題になる一方、中国や米国でEVの販売が減速し、欧州におけるEV振興策の見直しなども重なって先行きが見通しづらくなっている事情がある。
不透明な事業環境のもとでは複数のシナリオを用意し、臨機応変に対応するといった柔軟な姿勢が欠かせない。需要に応じて設備投資を段階的に実施するなどの工夫が必要になる。
知能化ではChat(チャット)GPTなどの生成AIを活用し、操作性を高める取り組みが相次いだ。独BMWや、ソニーグループとホンダの共同出資会社が生成AIを使い、音声による操作を可能にする構想を示した。
生成AIの基盤技術を応用し、画像認識の精度を高めて自動運転や運転支援システムの高度化が可能になりつつあることにも目を向ける必要がある。安全は自動車の最優先課題のひとつであり、この分野で出遅れは許されない。
ただカギを握るソフトウエアの開発では米テスラが大きく先行し、期待通りの成果を上げられていない自動車メーカーも少なくない。長年にわたりハードウエアを主軸に据えてきた自動車メーカーが企業体質を改めるのは容易ではない。これまでの失敗から学び、体制を立て直す必要がある。
脱炭素も知能化も、自動車メーカーが単独でできることには限りがある。それぞれの分野で専門性を持つ企業との連携が不可欠だ。日本の関連企業も自社の強みを生かし、CESのような場面も活用して自動車メーカーとの協業の機会を探るべきだ。