[社説]自動車の転換に挑む日産・ホンダ提携
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2024/3/15 19:05
日産自動車とホンダが新連合を形成することで一致した
日産自動車とホンダが提携する。両社が手を組むのは電気自動車(EV)やソフトウエアといった、次世代の車づくりの骨格となる技術だ。両社には100年に1度といわれる自動車産業の大転換をけん引することを期待する。
現時点で協力の対象に挙がるのは、バッテリーやイーアクスルと呼ぶEVの主要部品と、自動運転などの車載ソフトウエアだ。具体的な取り組みを検討するのはこれからというが、共同での開発や調達が考えられる。
自動車産業の過去の合従連衡は規模の利益を追求したものが多かった。1999年に発足した日産・仏ルノー連合も主要部品を共通化したり、互いの工場を利用したりするなどして主にコスト面で効果を上げてきた。
日産とホンダの連合結成が物語るのは競争軸の変化だろう。従来の自動車メーカーが培ってきたエンジンなどの技術に磨きをかけ、規模を追い求めるだけでは、今後の自動車産業では戦えない。
部品が大幅に簡素化されるEVでは、これまでの蓄積が通用する保証はない。ソフト領域に関しては両社とも発展途上だ。電動技術やソフトに価値がシフトしつつある新時代の車に適合した体制づくりが、両社の課題といえる。
この点で、日産のパートナーであるルノーはすでに動き始めている。EVやソフトに力を入れるため実質的に会社を分割し、日産との資本関係も見直した。
一方のホンダも合従連衡から距離を置き、独力での事業展開にこだわる創業以来の戦略を転換している。13年には米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携し、ソニーグループとも共同出資会社を設立した。
三菱自動車を傘下に持つ日産がホンダと組んだことで、国内に8社ある乗用車メーカーは2陣営に集約される。スズキ、マツダ、SUBARU(スバル)、ダイハツ工業がすでにトヨタ自動車と資本業務提携している。新連合には王者トヨタへの対抗軸になって、日本の自動車産業を活性化させる役割を担ってほしい。
15日の記者会見で日産、ホンダの両社長が繰り返したのは新興勢力への警戒感だ。念頭に置くのは海外の巨大テック企業や米テスラ、中国勢のような新興勢力だ。新連合には従来の自動車産業の枠を超える新しいライバルとの競争をリードしてもらいたい。