[社説]日産はじめ自動車産業は逆風に備えを
#社説 #オピニオン
2024/11/10 2:00
日産の不振が目立ってきた=ロイター
日本の自動車メーカーへの逆風が強まってきた。米国と中国での苦戦を受けて、日産自動車など主要企業の採算が悪化している。トランプ氏の米大統領就任後には主要国との貿易摩擦が再燃する恐れもある。部品や素材も含め自動車産業は、不透明感を増す環境に備える必要がある。
8日に出そろった乗用車7社の4〜9月期決算は、スズキとSUBARU(スバル)を除く5社の連結純利益が前年同期と比べてマイナスとなった。海外勢でも独フォルクスワーゲンが工場閉鎖を検討するなど、自動車販売の失速の影響は世界に広がっている。
日本勢で不振が目立つのが日産だ。4〜9月期の連結純利益は94%減った。世界の新車販売の半分を占める米中で市場環境の変化に追いつけず、危機的な状況に陥っている。
米国ではバイデン政権が電気自動車(EV)を後押ししてきたが、足元では普及のスピードが鈍化し始めた。一方で日産は需要が高まるハイブリッド車の品ぞろえがなく、販売店からは悲鳴が漏れているという。中国でもEVやプラグインハイブリッド車で、現地勢との価格競争に苦しんでいる。
日産は再建に向けて世界規模での生産能力や人員の大幅削減を決めた。ただ、同社は3月、今後3年で世界販売を100万台増やす計画を公表したばかり。わずか半年で正反対の決断に追い込まれたわけで、経営陣の見通しの甘さは厳しく問われるべきだ。
今後は一段と不透明感が増す。最大の要因は米トランプ政権の誕生だろう。環境対策に後ろ向きな姿勢が続けばEVの普及がさらに遅れ、メーカー各社はEVとガソリン車の商品構成を再考する必要に迫られる可能性がある。
米国の通商政策も懸念材料だ。対中摩擦に加えて注視すべきはメキシコとの関係だ。トヨタ自動車、日産、ホンダ、マツダがメキシコ工場から米国に輸出する。トランプ氏はメキシコからの輸入に高関税を課す考えを示している。特に日産は世界販売の1割弱にあたる年30万台を輸出しており、実現した際の打撃は計り知れない。
完成車メーカーや関連企業に問われるのは、数々の不確実性への柔軟な対応だ。いつ、どの車を、どこで、どれだけつくるべきか。EVへの移行プロセスをどう描くべきか。変化に強い組織運営が求められている。