[社説]Apple提訴が示す巨大IT規制の難路
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2024/3/28 2:00
ガーランド米司法長官は記者会見でアップルを非難した(21日、ワシントン)=AP
米司法省が反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとして米アップルを提訴した。スマートフォン市場を独占し、幅広い製品やサービスの技術革新を妨げたと判断した。
アップルはiPhoneでIT市場に革新を起こしたが、近年は守りの姿勢が強まり、顧客の囲い込みが目立つ。裁判を通じて問題の所在を明らかにしつつ、時代遅れの面がある競争法を見直す契機にしたい。
司法省は提訴に際し、1990年代後半に米マイクロソフトを反トラスト法で訴えた裁判を引き合いに出した。訴訟により同社の市場支配力が低下し、アップルや米グーグルが成長する余地が生まれたとの主張だ。
だが、マイクロソフトがパソコンの基本ソフト(OS)で90%を上回るシェアを握っていたのに対し、世界のスマホ市場におけるアップルのシェアは20%ほどだ。米国内でも60%台にとどまる。スマホは韓国サムスン電子などの競合事業者も多い。
米国ではトランプ前政権の末期から巨大IT企業を反トラスト法違反で訴える動きが相次ぐ。アップルへの提訴により、主要4社を対象とした訴訟が出そろった。ただし裁判は政権の思惑通りには進んでいないのが実情だ。
背景には、変化のスピードが速く多くのサービスが無償で提供されるデジタル時代に、反トラスト法が十分に対応できていない事情がある。政治色を帯びやすく、予見性が低いとの指摘も出ている。既存法が機能不全ならば、法改正や新法制定も検討すべきだ。
実際、欧州連合(EU)は事後規制である競争法には限界があると判断し、予防的な規制としてデジタル市場法を施行した。執行機関である欧州委員会は25日、同法に基づいてアップルなど3社の調査を始めた。
日本でも政府がスマホのアプリ配信サービスなどの分野で独占的地位の乱用を防ぐ新法を検討し、2024年中に国会へ提出する準備を進めている。米欧の例から学び、競争促進と利便性や安全の確保を両立させる必要がある。
前提となるのは幅広いステークホルダー(利害関係者)を巻き込んだ議論だ。米欧では提訴や新法によって消費者がどのような恩恵を受けるか不明確だといった声も上がっている。丁寧な説明で理解を深めることが欠かせない。