バンブーズブログ

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[社説]アプリ配信サービス「開放」の影響注視を


 
 
#ビッグテック #社説
2024/2/2 19:05
 
米アップルは欧州でアプリ配信サービス運営の外部開放を余儀なくされた
米アップルが欧州で、アプリ配信サービスの運営を外部企業に開放する。同社は2008年に外部企業が開発したアプリをスマートフォンに取り込めるようにしたが、自社の配信サービスの利用を義務付けていた。地域限定とはいえ、歴史的な規制緩和になる。

世界のアプリ市場は25兆円規模にまで拡大し、ソフト産業の成長に貢献している。ただ、最大30%の販売手数料の大部分がアップルと米グーグルの2社に流れる構図が続き、各地で寡占への懸念が高まった。欧州の事例を参考に、日本でも安全や利便性の維持と競争促進の両立を目指したい。

アップルが配信サービスの開放に転じたのは、欧州連合EU)で競争を促進し、消費者の選択肢を増やすことを目的としたデジタル市場法(DMA)の本格的な運用が3月に迫っているためだ。

DMAはIT大手が基本ソフト(OS)やSNSといった他社の事業の基盤となる技術を使い、自社の製品やサービスを優遇することなどを禁じる。違反すると最大で世界売上高の20%を制裁金として科す厳しい内容で、グーグルや米メタなども相次いで欧州向けのサービスを見直している。

競争促進が必要なことは間違いないが、懸念もある。

ひとつは、アプリの流通経路が広がることでアップルによる事前審査や監視が不十分になり、コンピューターウイルスの感染が広がったり、個人情報の流出が増えたりする事態だ。こうした問題が生じないか、欧州の動向に目を凝らす必要がある。

また、欧州とその他の地域で異なるルールが適用されることで、アプリ開発を手がける企業の負担が増すといった指摘もある。特に中小企業に不利に働くことがないか影響を注視したい。

アップルは配信サービスの運営を外部企業に開放する一方、自社の配信サービスを利用しない一部企業を対象とした新たな手数料を導入する方針を示している。DMAの趣旨に反するとの批判が出ており、狙い通りに競争が活発になるのかも注目点となる。

アプリ配信サービスなどをめぐっては日本政府も独占的地位の乱用を防ぐ新法の検討を進め、24年中に国会に提出することを目指している。先行して規制強化に動く欧州の状況を注視し、議論に反映することで、よりよいルールにしていく必要がある。