[社説]安全性を軽くみていた「紅麹」健康食品
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2024/3/28 19:05
小林製薬の「紅麹」サプリは、コレステロールを下げるとうたっている
体によいとされる「健康食品」を摂取して、なぜ病気にならなければいけないのか。本末転倒だ。
小林製薬が製造した「紅麹(こうじ)」を原料とするサプリメントによる健康への被害が広がっている。これ以上、事態が深刻になるのを防ぐとともに、原因の究明に全力を尽くしてもらいたい。
今月22日、小林製薬は腎臓病などの症状が出たとして、紅麹を成分とする健康食品の自主回収を始めた。これまでに少なくとも100人が入院、4人の死亡例が明らかになった。寄せられた相談件数も3千件超に上る。
厚生労働省は医療機関に対し健康被害が疑われる事例を確認するよう、協力を要請した。今後、被害の報告が増える公算は大きい。健康食品の被害としては異例の事態だ。小林製薬は多数の食品メーカーに原料を供給してきた。全容の把握を急がなければならない。
小林製薬によると1月以降、複数の医師からの照会で判明し、社内調査を始めたという。これまでの分析で「意図しない成分」が一部に含まれていたが、これが原因かどうかは不明。摂取と発症との因果関係もまだわかっていない。
国や保健所への報告は最初の症例報告から2カ月以上たっていた。回収や消費者への注意喚起の遅れが被害を広げた可能性もある。安全問題を軽くみていたと言わざるを得ない。
今回の紅麹サプリは「機能性表示食品」と呼ぶ健康食品だ。コレステロールを下げる作用を持つ成分が入っており、医薬品と誤解を招きかねないほど、機能(効能)をうたってきた。
健康な人が毎日、摂取するのだから、有効性への期待が大きいのなら、安全面へも十分に配慮する必要がある。商品化にあたって安全確認は万全だったか、製造工程や品質の管理に抜かりがなかったか、徹底的に検証すべきだ。
根拠に基づいた健康への効果をアピールできる機能性表示食品は2015年に規制改革の一環で誕生した。有効性と安全性について国の審査はなく、企業が消費者庁に届け出をすればよい。健康産業の市場拡大をめざしてきただけに、制度の信頼性を揺るがす事態となったのは残念だ。
消費者庁は約7千あるすべての機能性表示食品を対象に健康被害の報告がないか点検する。速やかに結果を公表し、消費者の不安解消につなげてもらいたい。