バンブーズブログ

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北朝鮮包囲網の再構築へ

[社説]北朝鮮の不正を隠す決議案否決
 
 
#北朝鮮 #社説
2024/4/2 19:00
 
北朝鮮への制裁監視が弱まる懸念が高まっている。専門家パネルの任期を延長する決議案を否決した国連安保理(3月28日、米ニューヨークの国連本部)=共同
国連安全保障理事会がこのほど北朝鮮への制裁の履行状況を調べる専門家パネルの任期を延長する決議案を否決した。常任理事国のロシアが拒否権を使ったためで、このままでは活動を続けられなくなる由々しき事態である。

2009年に設置された専門家パネルは北朝鮮や加盟国の決議違反を監視し、報告書を年2回提出してきた。任期は毎年更新され、今回は日米など13カ国が決議案に賛成した。だが中国が棄権にとどまったのに対し、北朝鮮と関係を深めるロシアは一線を越えた。

安保理決議に基づく制裁の実効性を高めるため、制裁逃れの実態と巧妙化する手口を明るみに出す専門家パネルの意義は大きい。

今年3月に公表した23年最終報告書によると、北朝鮮は制裁に反して石炭輸出や石油精製品の輸入をなお続けている。専門家パネルは制裁逃れに中ロの企業の強い関与が疑われる点にも言及した。

北朝鮮が17〜23年におよそ30億ドル(約4550億円)相当の暗号資産(仮想通貨)へのサイバー攻撃に関与した疑いがあり、外貨収入の半分を得て大量破壊兵器計画に使用している可能性も指摘した。2日に弾道ミサイルを発射するなど経済苦境下でもミサイルを頻繁に飛ばす資金源が浮かぶ。

専門家パネルの勧告を受けて、各国は調査に協力する必要があり、北朝鮮への圧力になったはずだ。安保理が大国間の対立で機能不全に陥るなか、専門家パネルまで打ち切られれば制裁をめぐる監視体制が弱まり、北朝鮮の不正が闇に葬られる懸念が高まる。

拒否権を発動したロシアは、北朝鮮との間で武器の取引があった可能性を報告書が指摘したことに反発したようだ。過去には制裁決議を尊重する立場をとってきただけに、自国の利益優先で北朝鮮の暴走に手を貸す罪は重い。

北朝鮮の核・ミサイル開発に拍車がかかり、大量破壊兵器の拡散につながりかねない。安保理非常任理事国である日本は北朝鮮包囲網の再構築へ汗をかくべきだ。