バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

イラン・イスラエル報復の連鎖回避を

[社説]イラン・イスラエル報復の連鎖回避を
 
 
#社説 #オピニオン #イスラエルハマス衝突
2024/4/15 19:05
 
イランのミサイルを迎撃するイスラエルの防空システム「アイアンドーム」(14日、イスラエル中部)=AP
イランが在シリアのイラン大使館周辺に空爆を受けた報復だとして、イスラエルをミサイルやドローン(無人機)で攻撃した。パレスチナ自治区ガザでの衝突で揺れる中東の混迷が一段と深まり、戦火が広がりかねない。報復の連鎖を避けなければならない。

イランがイスラエルに直接攻撃を仕掛けたのは初めてだ。イスラエルの反撃次第では、国対国の交戦に発展する恐れがある。イスラム組織ハマスなど非国家主体との衝突とは次元が異なる。

今回の攻撃は99%が迎撃され、死者はなかったと伝えられた。イランは2週間近く報復を警告したうえ、到達に時間のかかるドローンを多用し、迎撃の猶予を与えた。最高指導者ハメネイ師は「罰せられなければならない」と明言しており、イスラエルに目に見える形で報復せざるを得なかった。一方で人的被害を抑える計画を練った形跡がある。

イスラエルやその後ろ盾の米国と全面衝突する意志はないとのイラン側のメッセージではある。しかし武力行使は人命を危険にさらし、際限ないエスカレーションを招く恐れがある。主要7カ国(G7)首脳が直ちにイランの攻撃を非難したのは当然だ。

イスラエルは自ら明言しないが核保有国とみられており、イランは核兵器製造の力を備えつつある。両国の報復合戦は極めて危険な領域に至る恐れが強い。双方に最大限の自制を求めたい。

バイデン米大統領イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議し、イランへの反撃に反対すると伝えたと米メディアは報じた。米軍はイスラエル軍を支援し「ほぼ迎撃」の成果をつくった。イスラエルに過剰な報復を思いとどまらせようとする努力を評価すべきだ。

2020年に米軍がイラクイラン革命防衛隊の司令官を殺害した際、イランはイラク駐留米軍基地に報復攻撃を加えた。このとき米国は反撃を思いとどまり、両国間の緊張は続いたが全面衝突は回避した。しかしネタニヤフ氏は求心力の回復や政権の延命のため、強硬な対抗措置をいとわないとの見方がある。

中東情勢がいっそう緊迫し原油価格が上昇すれば世界経済への影響も大きい。両国とも攻撃を受けたことで損なわれた抑止力の回復を急ぐあまり強い対応をとる懸念はある。危機の増幅を国際社会は一致して食い止める必要がある。