バンブーズブログ

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デジタル赤字」を稼ぐ力に転じる変革を

[社説]「デジタル赤字」を稼ぐ力に転じる変革を
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/10 19:05
 
グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルのアプリ
日本の企業や個人が海外のITサービスに支払うお金が膨らんでいる。それをデジタル化の加速につなげ、稼ぐ力を高めなければ、日本からお金が出ていくだけになってしまう。

財務省によると、海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支は、2023年度に25兆3千億円あまりの黒字だった。22年度の3倍に迫る額で、過去最高の水準となった。

日本の稼ぐ力が強まった結果とは言いがたい。

黒字が大幅に増えたのは、資源高の一服で輸入額が前年度に比べ1割減り、貿易収支の赤字が縮小したからだ。輸出は北米向けの自動車が好調だったものの、全体で見ると額は2%ほどの伸びにとどまった。輸出で稼ぐ「貿易立国」の面影は薄れつつある。

代わりに稼ぎ頭となったのは、海外への投資で得られる利子や配当だ。そのやり取りを表す第1次所得収支は23年度に35兆円を超す黒字になった。日本企業が海外で攻めのM&A(合併・買収)を進めた成果にほかならない。

急増するインバウンド(訪日外国人)が日本で使うお金も、経常収支の黒字を押し上げる要因になっている。新型コロナウイルス禍の収束で、旅行収支の黒字は4兆2千億円と前年度の3.6倍に達した。

一方、新たな赤字要因として浮上しているのが、米巨大テック企業の「GAFA」などが提供するネット広告やクラウドサービスへの支払いだ。いわゆる「デジタル赤字」は約5.6兆円と5年でおよそ1.7倍に膨らんだ。

生成AI(人工知能)の活用が本格化し、デジタルサービスの需要は今後も拡大が続く。こうした事業を手がけるのは、多くが海外のIT企業だ。使えば使うほど日本の富は国外に流出する。

重要なのは、こうしたデジタル化に伴う海外への支払いが増えても、日本企業がそれを生かして生産性を高め、付加価値の高い製品を生み出すことだ。日本発のイノベーションで新たな稼ぎ手を育てていかなければならない。