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日中韓の対話再開を地域の安定に生かせ

[社説]日中韓の対話再開を地域の安定に生かせ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/27 19:05
 

4年半ぶりとなる日中韓サミットが27日、ソウルで開かれ、自由貿易協定(FTA)交渉の再開など幅広い協力をうたった共同宣言を発表した。緊張が高まる東アジアで首脳級が顔を合わせる意義は大きい。対話再開を地域の安定に生かさねばならない。

宣言は、合意しやすい人的交流と相互投資の拡充を前面に打ち出した。日韓にとって中国は貿易総額の20%ほどを占める最大の貿易相手国で、人口減少と少子高齢化といった同じ課題も抱えている。安定した隣国関係づくりは安全保障、経済両面で重要である。

同サミットの久々の再始動は中国の意向が左右した。国内景気の冷え込みや地方財政の悪化などで日韓と経済関係を立て直す必要性に迫られたのではないか。昨年11月に釜山で開いた3カ国外相会談の際は見送られた晩さん会や共同記者発表にも今回は応じた。

中国が外資誘致への期待を示す一方、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に関し、日本側が求める日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃などでは大きな進展がなかった。宣言には北朝鮮の非核化に向けた連携も入っておらず、溝の深さを物語る。

北朝鮮はこの日、軍事偵察衛星とみられる人工衛星を発射すると日本側に通告した。弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も禁じた国連安全保障理事会決議違反である。共同宣言がめざす地域の平和と安定に挑戦する行為で、中国は北朝鮮に中止を迫るべきだ。

岸田文雄首相と韓国の尹錫悦大統領の信頼関係が中国を同サミットに呼び戻したのは間違いない。新総統が誕生した台湾をめぐる問題は日韓の経済安全保障やエネルギー問題にも波及する。中国の強圧的な言動に声をそろえて言うべきことを言う姿勢が大事だ。

4月の総選挙で与党が大敗した韓国では尹政権が対日政策を含めて野党の攻撃にさらされている。26日の日韓首脳会談では、水素などのグローバル供給網の確保などに向けた協力の強化で合意した。両政府は成果を積み重ねて揺るぎない関係を築くよう求めたい。

日中韓サミットに中国から参加するのは首相で今回も李強氏だった。中国はトップの習近平国家主席に権力が集中する。最近も台湾全域を取り囲む形で軍事演習に踏みきるなど強硬姿勢を鮮明にしており、岸田首相は習氏を対話の場に引き出す努力も必要になる。