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仏は鉱物産地の混乱収束を

[社説]仏は鉱物産地の混乱収束を
 
 
#社説 #オピニオン
2024/5/27 19:00
 
暴動で焼かれた仏ルノーの店舗(14日、ニューカレドニア・ヌメア)=AP
南太平洋のフランス領ニューカレドニアで暴動が発生した。重要鉱物のニッケルの産地でもあり、仏政府には現地との対話を通じて混乱を収束させるよう求めたい。鎮静化は急務だ。

暴動は、ニューカレドニアに10年以上暮らすフランス人に地方参政権を与える改憲案に対する独立派の抗議から発展した。仏本国の議会の決定で、先住民の票の力が薄まると受け止められた。

放火や略奪が相次ぎ、これまでに7人が死亡したと伝えられた。

マクロン仏大統領は23日に自ら現地入りし、この改憲手続きを延期する考えを明らかにした。仏大統領府は非常事態を現地時間28日に解除する方針を示した。現地の声にも耳を傾け、混乱が再燃しないよう全力を挙げてほしい。

ニューカレドニアはニッケルの生産量が世界3位だ。暴動を受け、供給不安から国際指標となるニッケルの先物価格は一時9カ月ぶり高値をつけた。

ニッケルはレアメタル希少金属)のひとつで、電気自動車(EV)の電池に使われる。脱炭素のカギを握る。鉄との合金であるフェロニッケルは、ステンレス鋼の原料となり幅広い製品をつくる。日本は昨年ニッケル鉱石とフェロニッケルの輸入でそれぞれ7割をニューカレドニアから調達した。

こうした重要鉱物の安定調達は、日本にとって死活的だ。不断に供給網を強化する必要がある。廃電池など「都市鉱山」からの資源回収にも力を入れるべきだ。

今回、独立派を後押ししたのは旧ソ連アゼルバイジャンだとフランスの閣僚は主張した。フランスがアゼルバイジャンと対立するアルメニアを支援しているのが背景だとの観測がある。

2021年にニューカレドニアの独立を問うた住民投票では、中国が独立運動を支援しているとの見方が浮上した。南太平洋は米国と中国のつばぜり合いの舞台のひとつだ。国際的な影響力争いが資源調達に及ぼすリスクにも、警戒を怠るわけにはいかない。