バンブーズブログ

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『覆面介入』

[社説]円安対応の課題映す巨額介入
 
 
#社説 #オピニオン #為替介入
2024/6/2 19:00
 
4〜5月の介入は実施時に公表しない「覆面介入」だった(介入があったとみられる5月2日の円急伸を示すモニター)=ロイター
財務省は4月26日〜5月29日に計9.8兆円弱の為替介入を実施したと公表した。5月初旬にかけての円安局面での円買い・ドル売り介入を反映したとみられる。円売り圧力はなお強く、巨額介入は円安対応の課題を映し出す。

介入は2022年9〜10月の円買い(計9.2兆円弱)以来で、規模は過去最大だった当時を上回る。すべて実施時に公表しない「覆面介入」だった。

今回の開示は期間中の介入の有無と総額のみだが、市場は4月29日と5月2日に当局が円買い介入に動いたとみている。根強いインフレで米利下げ観測が後退するなか、円相場が一時34年ぶりに1ドル=160円台に急落した直後だ。

相場の急変動は企業の事業計画に狂いを生じさせる。円安加速で物価高が進むと家計や内需企業への悪影響も大きい。今回の介入は無秩序な円安を食い止めようとする試みとして妥当といえる。円は一時151円台に値を戻した。

だが米国側の要因が大きい以上、介入だけで円安の流れ自体を転換するのは難しい。円は足元で再び157円台まで下落した。米インフレの収束が明確にならない限り、円安との厳しい戦いが続くと覚悟したほうがよいだろう。

日銀が政府と足並みをそろえて円安への警戒を強めたのは評価できる。ただし円安阻止を目的に金融引き締めを急ぐと金利上昇が景気を冷やしかねない。あくまで経済や賃金・物価を見極めつつ、適切な政策金利の水準や国債保有の削減ペースについて検討を重ね、市場との共有を試みるべきだ。

日銀が金融調節で国債の購入額を減らしたのを機に債券市場では金融政策の今後に不安が強まり、長期金利は5月30日に一時1.1%と13年ぶりの水準に上昇した。為替と債券の安定両立へ、日銀は市場との対話力が試される。

為替の長期的な安定には国内の産業立地の戦略を練り直し、海外からの直接投資や国内企業が海外で稼いだお金の還流を促す努力が欠かせないのは言うまでもない。