バンブーズブログ

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航空燃料不足の克服を

[社説]官民で航空燃料不足の克服を
 
 
#インバウンド #社説
2024/6/22 19:00
 
TSMC進出に沸く熊本でも、燃料不足で台湾路線の増便がままならない(熊本空港)
経済成長のけん引役に期待されるインバウンド(訪日外国人)需要に、思わぬ逆風が吹いている。航空燃料の不足が深刻化し、海外航空会社が日本への就航や増便をあきらめる例が相次いでいる。

石油元売り業界と航空業界、さらに所管の経済産業省国土交通省は燃料の供給拡大に早急に手を打つ必要がある。

旅客機は通常、片道分の燃料を積んで目的地まで飛び、帰りの燃料は現地で調達する。

だが、現状では日本に就航する航空会社は帰りの燃料調達のメドがたたず、昨年末頃から北海道や熊本で増便などを断念する例が目立ち始めた。最近では成田などの拠点空港でも運航を取りやめるケースが広がっている。

背景にあるのが国内の石油精製能力の減少だ。ガソリンなど主力油種は今後の需要縮小が見込まれ、石油元売り業界と経産省は業界再編や製油所の統廃合などを進めてきた。その結果、需要増が期待できる航空燃料も増産余地が乏しくなり、新型コロナウイルス禍の後の海外との往来再開に伴う需要増に対応しきれなくなった。

加えて精製された燃料を国内各地に運ぶ石油輸送の船舶や乗員、空港で給油する作業員も不足し、供給制約に拍車をかけた。

現時点で影響が出ているのは主に海外エアラインだが、今後はANAホールディングスなど国内大手の路線拡大なども大幅に制限される恐れがある。

事態打開のひとつのカギは韓国などからの燃料輸入の拡大だ。国内の供給能力は今後も頭打ちの可能性が高く、必要な需要を賄うためには港湾設備を含む輸入体制の拡充が必要だろう。元売り各社のほか、商社などにも新たな商機が広がるのではないか。

海外路線の開設は地域にとって来日客誘致や産業振興のための大きな一歩だ。燃料不足がそれを阻んでいる現状は残念というほかない。北海道などからも燃料の安定供給への要望書が政府に提出された。迅速な対応が求められる。