社説]沖縄の不信高めた政府の失態
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2024/7/4 19:00
上川外相㊧に抗議文を読み上げる沖縄県の玉城知事(3日、外務省) =共同
沖縄県で米兵による性的暴行事件が相次いでいる。卑劣で許されぬ犯罪だ。米軍は綱紀粛正と再発防止を徹底すべきである。
この問題で日本政府が事件を県に伝えていなかったとして、沖縄が政府への不信を高めている。近年、辺野古問題などで沖縄ときちんと向き合おうとしてこなかった政府の姿勢がもたらした失態といえる。政府は沖縄の信頼回復に真摯に取り組むべきだ。
事件の一つは昨年12月、米軍嘉手納基地の空軍兵が少女を暴行したことだ。さらに今年5月には海兵隊員が成人女性に暴行した。いずれも那覇地検が不同意性交などの罪で起訴している。
外務省はエマニュエル駐日米大使に抗議した。だが被害者のプライバシーへの配慮などを理由に県に連絡しなかった。県が事件を把握したのは6月25日だという。
この間、5月に米大使が沖縄を訪問、6月には県議選が行われたほか、沖縄戦の慰霊の日に岸田文雄首相が沖縄を訪れた。これらに影響しないよう、公表を遅らせたと疑われても仕方あるまい。ほかに未公表としていた事件が3件あることも明らかになった。
沖縄が反発するのは当然だ。玉城デニー知事は3日、上川陽子外相や防衛省に抗議した。4日には県議会が米政府への抗議決議と日本政府への意見書を採択した。いずれも被害者への謝罪と速やかな通報を求めている。日米両政府はしっかり対応すべきだ。
沖縄での米軍関係者による刑法犯罪は昨年72件に上り、ここ10年で最多になった。中国が軍事的圧力を強めるなか、警戒する在沖縄米軍の緊張の高まりが米兵の心理に影響しているのかもしれない。だがそうした安全保障環境だからこそ、県民の反基地感情を高め、米軍の駐留に支障を来すようなことがあってはならない。
1995年の少女暴行事件は基地への反発を強め、普天間基地返還のきっかけになった。日米両政府は再発防止に努め、基地負担の一層の軽減も進めるべきだ。