バンブーズブログ

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ファッション界は法を強みに

[社説]ファッション界は法を強みに
 
 
#社説 #オピニオン
2024/7/11 19:00
 
日本発のファッションは世界にファンが多い
世界のファッション産業で法律の持つ重みが増している。デザイン盗用、生産現場での人権擁護、増えるアパレル廃棄物への対策などで、国内だけでなく各国・地域の法規制の知識が不可欠になりつつある。ファッションは日本のソフトパワーの柱のひとつだ。海外展開の壁や落とし穴への対策を官民で進めたい。

ファッション業界は海外企業も含め、他の産業に比べデザインやアイデアを法で守る意識が希薄だった。盗用を訴えても裁判で勝つ頃には流行が終わっている上、まねされることでデザインの評価が上がる面もあったからだ。生産地は国内で目も行き届き、価格は高く1着の服を長く着た。

しかし状況は変わった。ファストファッションの台頭で服のゴミが増えた。また新興の低価格サイトがヒット商品を素早くまねできるようになり、先行企業が利潤を確保しにくくなった。

欧米の高級ブランドは長い目でブランド全体の価値を高めるため法を重視する姿勢を強めている。ブランド品の古着を悪気なくリメーク販売した人が権利侵害を指摘される危険も増している。

生産や原料調達もグローバル化した。生産過程で人権侵害を疑われる商品は輸出販売が難しい。ここでも法の順守は不可欠だ。

欧米では近年、服などの廃棄物を減らすため新たな法律や条例を制定する動きが広がっている。売れ残り商品の廃棄禁止や環境負荷の公表義務づけなどの内容を盛り込む動きが目立つ。

これらの法律やルールは「ファッションロー」と総称され、欧米の関連企業では必須の知識となりつつある。日本の企業やデザイン事務所も対応を急ぐべきだ。

中小企業や個人事務所の手に余る部分は政府や業界全体でサポートしたい。経済産業省は昨年、ファッションローの入門的なガイドブックを作成、無料公開した。今後はより実践的な内容に充実させたい。ファッション分野に詳しい法曹人の育成も課題だ。