バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

対中関税の引き上げは慎重に

[社説]対中関税の引き上げは慎重に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/6/21 19:00
 
中国山東省の港で輸出を待つ電気自動車 =AP
中国が補助金で電気自動車(EV)などをつくりすぎ、安値で輸出している問題は世界経済を揺さぶりかねない。中国に真摯な対応を求めるのは当然だ。ただ、関税の引き上げといった制裁措置は報復合戦を招くおそれがあり、慎重な対応が求められる。

欧州連合EU)の執行機関である欧州委員会は、中国製EVの輸入に最大で38.1%の追加関税を課すと決めた。7月4日から実施する。

欧州委は中国から安価なEVが大量にEUに入ってきて、域内の競争をゆがめていると不満を強めていた。2023年10月から実態調査を始め、EVの供給網全体で中国政府が企業に不公正な支援をしていると結論づけた。

中国の習近平政権は「新たな質の生産力」というスローガンを掲げ、供給サイドの改革に力を注いでいる。実態はEVや太陽光パネルなどの新エネルギー産業に巨額の補助金を投じ、それらの製品の生産を後押しする政策だ。

結果として過剰生産が生じ、国内市場では吸収しきれない製品が海外の市場にあふれ出している。イタリアで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳宣言は、中国を念頭に多額の補助金など市場のルールに基づかない経済慣行に懸念を示した。

中国は過剰生産の存在自体を認めず、国際社会の不安と向き合おうとしていない。EUが調査に基づき、追加関税に踏み切るのはやむを得ない面がある。

だが、そうした措置はもろ刃の剣ともいえる。中国は対抗策を打ち出す構えをみせる。欧州が中国から輸入するEVの6割は米テスラといった欧米メーカーの製品でもある。泥沼の報復合戦は世界経済を混乱に陥れかねない。

バイデン米政権も中国製EVへの制裁関税をいまの4倍にあたる100%に引き上げる。貿易紛争は世界貿易機関WTO)などを通じ、話し合いで解決するのが原則である。自由貿易をゆがめる安易な強硬策は慎むべきだ。