バンブーズブログ

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中国の説明なき邦人起訴

[社説]中国の説明なき邦人起訴を強く非難する
 
 
#社説 #オピニオン
2024/8/23 2:00
 
アステラス製薬本社(ロイター)
中国で拘束中だったアステラス製薬現地法人の元幹部社員が起訴された。スパイ容疑とされるが、中国当局は経緯や具体的な容疑事実を一切明らかにしていない。元幹部は中国ビジネスに関わる日本企業でつくる「中国日本商会」の副会長という要職をかつて務めていた。説明がまったくない不透明な起訴を強く非難する。

現状で日本企業の社員らが安心して中国に出張できる環境にないのは明らかだ。いつ、どんな理由で拘束、起訴されるか不明という事態は異常で、対策の立てようもない。中国滞在歴が計20年超の元幹部は勤務を終えて出国する寸前に突然、拘束された。日本以外の外国企業社員も例外ではない。

習近平政権は2014年に反スパイ法を施行し、少なくとも日本人17人を拘束した。7月からはスマートフォン、パソコンなど携帯品の中身を当局者が随時検査できる態勢になった。中国共産党が7月に開いた重要会議でも「国家安全」の重視を強調している。

ただ、国家安全の範囲はあいまいで、運用に政治的裁量が入り込む余地もある。日本企業は中国出張を厳格に制限し、携帯させる電子機器から情報を極力削除する異例の対応を迫られている。

日本政府は拘束中の日本人らの一刻も早い解放をより強く中国に要求すべきだ。日本の経済界にとっても自らの問題である。中国側との接触の際、理を尽くして実情を説明し、解放を後押ししてほしい。中国でのビジネス環境が一層悪化すれば、停滞する対中投資が一段と落ち込みかねない。問題解決は本来、双方に利点がある。

日本人の安全を巡っては6月、江蘇省蘇州市で中国人の男が日本人学校のスクールバスを待つ日本人母子を刃物で襲い負傷させた。阻もうとした中国人女性は刺されて死亡した。この痛ましい事件についても中国側は「偶発的な事件」と説明するだけで、背景、動機を明らかにしていない。現地で不安が広がったのは当然である。

もうひとつの懸案は24日でまる1年を迎える中国による日本産水産物の全面輸入禁止だ。東京電力福島第1原発の放出処理水を巡る中国の主張に科学的根拠がないのは国際的にも証明されている。

一連の問題では中国側に威圧的な態度もみえる。このまま解決が遅れ、双方の国民感情も傷付けば日中関係に修復不能な打撃を与えかねない。心配である。