バンブーズブログ

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[社説]競技大会運営の改善を着実に


 
 
#社説
2023/4/14 2:00
実効性ある大会運営の改善が急務だ(指針を受け取るスポーツ庁室伏広治長官㊥、3月30日)=共同
大規模なスポーツ大会でのガバナンス強化を目指し、スポーツ庁などのプロジェクトチーム(PT)が組織運営の指針を策定した。東京五輪パラリンピックを巡る汚職や談合事件で地に落ちた信頼を取り戻すには、一つ一つの改善策を着実に実行していくことが欠かせない。

東京五輪では電通OBがスポンサー企業との契約で便宜を図ったとされる。外部有識者らで構成するPTは「組織委員会の理事会が適正に機能していたか疑問の余地がある」「利益相反管理の点で適切な人材配置がされていなかった」と反省点を挙げたうえで、今後の大会運営の改善策を示した。

特定企業からの出向者が多数を占めないようにすることや、役員候補者の選考は第三者が入った諮問委員会が行うことなどを盛り込んだ。法令に基づく開示以外の情報公開にも積極的に取り組むよう求めた。「利益相反管理委員会」といった独立組織によるチェックも提案している。

指針が示した対策は多方面に及んでおり、方向性はおおむね理解できる。問題は実効性だ。指針には法的拘束力がない。関係者には指針の理念をないがしろにすることなく、適正な組織運営に真摯に取り組むよう求めたい。

中長期的な課題もある。東京五輪では豊富なノウハウを持つ電通に多くを頼らざるを得なかったことが問題の背景にあると指摘されている。PTでは「特定企業に依存しなくても大会が運営できるような人材育成を」との意見が出た。今後の大きな宿題だろう。

日本ではこれからも多くの国際大会が予定されている。冬季五輪に名乗りを上げている札幌市も、招致の旗を降ろしてはいない。

「東京大会のために費やされた労力が、事件によってまったく無駄だったかのようにみられるなら極めて残念」。PTはそう指摘した。まさにその通りだ。二度と同じ轍(てつ)を踏むわけにはいかない。大会運営のあり方を一から見直していきたい。