バンブーズブログ

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[社説]生物多様性保全も経営課題に


 
 
#社説
2023/4/24 19:00
生物多様性条約第15回締約国会議の場で開かれたイベントで、企業の情報開示義務づけの必要性を訴える企業関係者や国際機関の代表(2022年12月)=共同
「ネーチャーポジティブ」は生物多様性の悪化をくい止めて回復させる考え方だ。国内の認知度はまだ低いが、世界の新たな潮流となりつつある。脱炭素や資源循環と同様に、企業は経営課題に取り込むべきだ。

主要7カ国(G7)の枠組みとして「ネーチャーポジティブ経済連盟」が発足した。政府と経済団体が協力し、先進事例や技術などの情報を共有し、協業をあっせんする。生物多様性保全につながる企業活動の普及を目指す。

経済活動に自然の恵みは欠かせない。食品や医薬品、建築などの産業は動植物を利用してきた。地下水などの水資源がなければ、製造業の多くは成り立たない。

国連環境計画の関連機関の分析では、主要18業種のうち10業種が森林などの「自然資本」に依存している。原材料や部品の供給網も含めると、さらに広がるだろう。

無秩序な開発や乱獲など人間活動の影響で、1年間に4万種を超す生物が絶滅しているという。自然界では、多種多様な生物が互いに支え合っている。いったん崩れると、回復させるのは難しい。

まず、自社の活動が生態系にどれだけ依存しているのかを把握すべきだ。国際組織の自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が9月、生物多様性に関するリスク情報の開示を求める枠組みを正式決定する。世界で1000社を超す企業が導入する意向だ。

多くの金融機関や投資家がこうした動きに注目している。企業は経営リスクの低減につながる取り組みだと認識した方がいい。

日本にも先進事例がある。積水ハウスは2001年から、住宅の庭に在来の樹木を5本植える取り組みを進めてきた。琉球大学との分析で、周辺の木々や鳥、チョウを増やす効果が確かめられた。

保有する森林や緑地の保全に取り組む企業はあるが、生物多様性の回復を目指す取り組みはまだ少ない。政府は税制優遇や補助金など企業の取り組みを促す政策を推進する必要がある。