バンブーズブログ

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[社説]実質重視の企業統治改革を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/12 19:00
 
英国はガバナンス・コードの実質に目を向け始めた(英金融街中心部)
コーポレートガバナンス企業統治)の改革は、産業競争力の向上や資本市場の活性化に資すべきものだ。形式的なルールを課しすぎると、企業の負担感が増し経営の自由度や柔軟性が損なわれる。

この教訓を改めて示したのが、日本のガバナンス改革の範ともなった英国の現状だ。

同国の財務報告評議会(FRC)は、予定していたガバナンス・コード改定作業を見直すことにした。公表済みだった監査委員会の役割や、多様性に関する取り組みの改正案を撤回した。

FRCはガバナンス改革が企業の競争力を実質的に高めているかどうか、改めて検討する。英国のガバナンス改革は法的義務のない「コード」をつくり進められてきたが、過去の改定で形式的な開示項目が増え、産業界から負担増への批判が高まっていた。

市場改革において形式より実質を重視する姿勢は、今後の日本でも重要である。日本のガバナンス・コードは度重なる改定で取締役会の構成などについて、徐々にハードルを上げてきた。これにより経営の透明度は上がったものの、専門性が疑わしい社外取締役が増えるなど、形式主義の弊害も見過ごせなくなった。

金融庁はコード改定を定期的に実施するのではなく、企業価値の向上の観点で企業の自律的な意識改革を重視する考えを示している。投資家の行動規範に関するスチュワードシップ・コードも同様だ。日本の改革に影響を与えてきた英国の動向と併せ考えれば、今後のガバナンス改革の要諦は形式から実質へとさらに移るだろう。

今後注目すべきは政府が決めるルールの細目ではなく、個別の企業や投資家の動きだ。

例えば、トヨタグループが株式持ち合いの縮小に動き、野村アセットマネジメントは投資先に取締役会の半数以上を社外とするよう求めることにした。日本を代表する企業と資産運用会社による、市場活性化に向けた取り組みとして歓迎したい。