バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]失敗糧に次の月面着陸に挑め


 
 
#社説
2023/4/29 2:00
月面着陸船からの通信が途絶えたことを報告するアイスペースの袴田CEO(26日未明、東京都江東区
民間初の月面着陸を目指した日本のスタートアップ、ispace(アイスペース)の挑戦は失敗した。宇宙船は月面降下を始めたが最終局面で通信が途絶えた。落下して衝突したとみられる。

宇宙開発に失敗はつきものだ。米スペースXも失敗を繰り返しながら改良し、今はロケット打ち上げ市場で圧倒的な存在感を示す。

失敗とはいえ、打ち上げから月周回軌道投入までの運用経験を含め得られた知見は大きい。この経験を生かし、2024年に予定する次の打ち上げに挑んでほしい。

月面着陸は極めて難しい。無人の宇宙船は完璧な自動操縦が求められる。過去に成功したのは旧ソ連、米国、中国しかない。

アイスペースは必要な人材や技術、機材を世界から集めた。グループ全体で約220人の社員のほぼ半数が外国籍だ。独自開発にこだわらず、実績のある技術を選び、組み合わせる戦略を採った。

宇宙開発は10年単位の時間がかかるとされる。6年で宇宙船を完成させ、月面着陸まであと一歩に迫ったことは高く評価できる。

詳細な失敗原因は分析中だが、測定装置の不具合だった可能性が高い。高度を誤って認識していたため、月面に到達する前に、燃料を使い切ったようだ。

部品かプログラムに不具合があったとしたら、品質管理態勢を再点検すべきだ。次回の打ち上げ前に、徹底的に検証して失敗の芽をつぶしておくことが必要だ。

失敗の影響で、アイスペースの株価は下落が止まらない。2回目の打ち上げに必要な費用は調達したとはいえ、同社の経営陣は事業収益化の見通しなどを投資家に丁寧に説明する責任がある。再挑戦に向けての課題の一つだ。

今後の宇宙開発はスタートアップ企業の育成がカギを握る。リスクを恐れずに挑む起業家を応援するだけでは不十分だ。宇宙航空研究開発機構JAXA)や大学、企業の間で人材交流を急ぐとともに、政府は資金支援や税制優遇などの環境整備を進めてほしい。