バンブーズブログ

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ソフトバンクグループ、「アリババ外し」で利益4.8兆円。それでも気がかりは今後待ち受けるKPIへの深刻な影響


ソフトバンクグループ(SBG)
ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)
孫正義
決算
村上 茂久 (執筆協力・伊藤達也、連載ロゴデザイン・星野美緒、編集・常盤亜由子)
May. 30, 2023, 07:30 AM
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(出所)ソフトバンクグループ 2023年3月期 決算説明資料より。
ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)は5月10日、2023年3月期の決算を発表しました。親会社の所有者に帰属する当期利益(以下、当期利益)は9701億円の赤字となり、2022年3月期の1.7兆円の赤字に続き、2期連続の赤字となりました。

過去5年分の当期利益は、図表1の通りです。

 

 

(出所)ソフトバンクグループ 2023年3月期決算短信および過去の有価証券報告書より筆者作成。
本連載では、過去3回にわたってソフトバンクGを取り上げてきました。2020年3月期は1兆円近くの赤字になったかと思えば、翌2021年3月期には日本企業で過去最高となる約5兆円の当期利益を記録。しかし2022年3月期は損失1.7兆円と再びのマイナスとなり、今また2023年3月期も約1兆円のマイナス。このように、同社の業績は目まぐるしく変化してきました。

ソフトバンクGの業績を定点観測していると、なぜこれほどジェットコースターのように浮き沈みが激しいのか、その特異な利益構造ならではの強みと課題が見えてきます。

そこで本稿では、ソフトバンクGの最新の決算内容を会計とファイナンスの観点から考察し、1兆円近い赤字となった今回の業績をどう評価すべきなのかを考えていきたいと思います。


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投資損益4.6兆円のからくり
図表2は、2023年3月期のソフトバンクGのP/L(損益計算書)を滝チャートで表現したものです。

 

※1グラフ中「持株会社投資事業からの投資損益等」は、持株会社投資事業からの投資損益4.56兆円とその他の投資損益▲7329億円から構成される。 ※2 その他財務関連費用等は、財務費用、為替差損益、持分法による投資損益、デリバティブ関連損益(投資損益を除く)、SVFにおける外部投資家持分の増減額、その他損益から構成される。

(出所)ソフトバンクグループ 2023年3月期決算短信をもとに筆者作成。
図表2から分かるのは、ソフトバンクGは持株会社投資事業からの投資損益が4.5兆円もある一方、この投資損益を打ち消して余りある損失を、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)で出しているということです。

前者の持株会社投資事業のほとんどを占めるのが、アリババ株式先渡売買契約決済関連利益です。これだけで4.8兆円(後述する図表5の①と②の合計額)もあります