バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]中東2国家共存を諦めるな


 
 
#中東・アフリカ #国際 #社説
2023/8/10 2:00
 
1993年9月に米ホワイトハウスで開いた式典で握手するイスラエルのラビン首相㊧と、パレスチナアラファト議長、仲介役となったクリントン米大統領(いずれも当時)=ロイター
戦後の国際政治に深く刺さったトゲを抜く努力をあきらめてはならない。イスラエルパレスチナによる1993年の「パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)」から30年となる。「2国家共存」をめざした中東和平プロセスは暗礁に乗り上げ、暴力の連鎖がいまも続いている。

パレスチナ問題には過去の植民地支配や宗教、民族問題もからむ。地域の対立の根っこにある紛争であり、地政学的な重要性はいくら強調しても足りない。

現状にいたった責任の多くは双方の指導者にある。イスラエルのネタニヤフ首相は政権奪取のため極右勢力を連立に招き、その極端な主張を受け入れた。入植地の拡大は国際法違反であり、正当化できない行動だ。

パレスチナではアッバス議長が評議会選挙の延期を繰り返し民主主義をないがしろにした。組織内部は汚職がはびこり、過激派ハマスが支配するガザ地区との分裂が続く。経済の苦境と政治の絶望的な状況が若者を過激行動に駆り立てていることを認識すべきだ。

紛争の終結に力を注いできた米国はいま、中国との覇権争いに多くの政治資源を振り向けざるを得ない。同盟国が米国の影響力低下を補う必要がある。

イランとサウジアラビアの和解を仲介した中国は、パレスチナ和平への介入にも関心を示すが、民主主義抜きで安定や発展を追う発想には不安がぬぐえない。

日本は「平和と繁栄の回廊」と呼ぶ独自の構想で貢献している。農産加工団地にオリーブせっけんをつくる企業などが生まれ、パレスチナ人の雇用を生み出した。地道な経済支援とともに、米国やアラブの大国に和平実現を働きかけていく必要がある。

立場の一貫性を保つことも重要だ。1973年の石油危機ではアラブ産油国の歓心を買おうと中東政策をあわてて転換し、対米関係の緊張をまねいた。日本らしい協力で関係国の信頼を積み上げることが紛争解決への貢献にもなる