バンブーズブログ

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[社説]中東の安定促すインフラ網に


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/18 2:00
 
「インド・中東・欧州経済回廊」構想を発表したバイデン米大統領㊨とインドのモディ首相㊥、サウジアラビアムハンマド皇太子㊧(ニューデリー)=ロイター
米国やインド、サウジアラビアなど8カ国・地域は、インドから中東を経由し欧州を結ぶ物流や通信、エネルギーなどのインフラ整備で連携する「インド・中東・欧州経済回廊」構想を発表した。

中東はアジアと欧州を結ぶ貿易の動脈上にある。国際物流の効率化を目指すインフラ協力を、地域の安定と成長につなげたい。

経済回廊構想は、インドで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせて覚書を交わした。海運と鉄道を組み合わせた物流網を整備し、通信網や水素パイプラインを敷設する。

貿易立国であり、石油・ガス輸入を中東に依存する日本にとっても恩恵がある。構想の実現に協力すべきだ。

国をまたぐインフラ整備がもたらす効果は大きい。ただし、特定の国が影響力を伸ばす手段に使い、世界の分断を広げるものであってはならない。

経済回廊構想は米国が主導し、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗する色合いが濃い。中国の仲介でサウジとイランが関係正常化するなど、中東での中国の影響力は増している。米国は中東戦略の立て直しを迫られており、今回の構想はその一手だろう。

中国が一帯一路に着手して10年が経過した。過剰な貸し付けに途上国が返済に窮する「債務のわな」と呼ばれる事態が表面化するなど、沿線国は警戒も強めている。主要7カ国(G7)で唯一、一帯一路に加わるイタリアは離脱の意向を伝えたとされる。

米主導の構想にはイスラエルやヨルダンも加わる見込みだ。広域インフラの整備がイスラエルとアラブの和解を後押しすることに期待する。だが、イランなど米国と対立する国を排除し、米中の囲い込み競争の場になっては困る。

イスラエルパレスチナが暫定自治宣言(オスロ合意)に調印して13日で30年だ。パレスチナ問題は依然、解決のめどが立たない。中東の課題を包括的に解決する協力の土台に育てる必要がある。