バンブーズブログ

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[社説]年金基金の運用体制強化が欠かせない


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/12 19:05
 
資本市場の活性化へ向けて年金基金が本来果たすべき役割は大きい(東京証券取引所
年金は加入者らから集めた資金を証券市場などで運用しながら給付にあてていく仕組みだ。株式市場でみれば大株主になる。年金基金がしっかりした知見を持ち、運用体制を強めることは資本市場の活性化にとって欠かせない。

年金基金が本来、果たしうる役割は大きいはずだ。ガバナンスの問題点や業績が長期にわたり低迷している企業に対し、株主総会などでノーと明確な姿勢を示す。資金を預ける資産運用会社に企業と建設的に対話するよう促す。しかし実際は多くが現状を黙認するばかりの物言わぬ株主だ。

政府は資産運用立国を掲げ、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で「資産運用業等の抜本的な改革」を打ち出した。その中で運用会社だけでなく、年金基金も高度化が必要だと指摘したのは適切だ。

大きな課題は人材難だ。企業年金の場合、人事や労務の出身者が運営を担っている例が多い。金融や運用の知識を十分持たないがゆえに、極端にリスクを回避したままだったり、総幹事と呼ばれる金融機関任せだったりしている。

内部の人材育成がまず大事になる。それが難しいなら経験者の採用や助言を得るなど外部の知見の活用を考えたい。小規模の基金ほど外部の助言を受けていないが、複数の基金が集まって事務を統合したり、共同運用したりする方法もあるはずだ。

運用の委託先選びでは、運用成績や能力よりも、母体企業との関係の深さが優先されがちだとの指摘がある。これでは競争原理が働かない。利益相反のおそれがないか、チェックが必要だ。

もちろん短期的な運用に走ってもよくない。リスク管理とのバランスに目配りがいる。年金の加入者や受給者のために最善の努力を果たさねばならない。

運用高度化は公的年金でも同じことがいえる。公務員共済組合など省庁の所管はそれぞれにまたがる。長期を見渡して体制を整え、議論を利害関係者に見えるよう開示するのがまず大事だ。

デフレ環境がもし変わってくるのなら、運用次第でより差が開く可能性を意識するべきだろう。個人が運用商品を選ぶ確定拠出年金などでもどんな選択肢があるのか、加入者にもっと周知することが大事になってくる。そうした視点からも年金基金の体制強化は重要度を増している。