バンブーズブログ

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[社説]物価高下の欧州低迷が心配だ


 
 
#社説 #オピニオン #金融政策
2023/9/16 2:00
 
ラガルドECB総裁は物価高と景気低迷のジレンマに直面する(9月14日の理事会後の記者会見、独フランクフルト)=AP
しつこいインフレと景気停滞の板挟みになった欧州経済が苦境に直面している。心配なのが、域内の経済大国ドイツの低迷だ。

欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で政策金利を0.25%の幅で引き上げた。利上げは10会合連続で、政策金利の一種である中銀預金金利(銀行が中銀に預ける際の金利)は4.00%と、単一通貨ユーロを導入した1999年以降で最も高くなる。

ラガルド総裁は理事会内で利上げに異論があったことを認めつつ「インフレ率は鈍化が続くが、なお高すぎる状態が長引くと予想される」と決定の理由を述べた。

一方で声明には今回で利上げを終える可能性を示唆する表現を盛り込んだ。ラガルド氏は金利水準を「今がピークだとは言えない」としたうえで「焦点が(水準から)継続期間にもう少し移っていくことは明らかだ」と語った。

データ次第で追加の利上げに動く余地を残しつつ、過去の金融引き締めの効果を見極める姿勢に移そうとする意図は理解できる。

だが、ECBの政策運営は難しさを増している。米国と比べると欧州のインフレ減速の勢いは鈍い半面、景気の弱さが際立つ。金融引き締めの必要性はまだ大きいのに、引き締めへの耐性は弱い。

苦境を象徴するのがドイツだ。欧州委員会は11日、2023年のユーロ圏の実質経済成長率見通しを0.8%と前回5月から0.3ポイント下方修正した。ドイツは従来のプラス0.2%からマイナス0.4%へと引き下げた。最大の経済国の不振は大きな懸念材料だ。

物価高で個人消費がさえず、輸出も低迷する。製造業の比重が高く、中国など主力輸出先の景気減速の影響を受けやすい。

ショルツ政権は中小企業の減税を柱に経済対策を打ち出したが、原油高の再燃によるエネルギー高が経済活動を一段と冷やす懸念もある。有効な処方箋は乏しく、先行きは予断を許さない。欧州経済の失速は日本を含む世界経済の足かせになる。注視が必要だ。