バンブーズブログ

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[社説]バランスのとれた質の高いESG投資を


 
 
#カーボンゼロ #社説
2023/10/6 19:05
 
投資カンファレンスでは「反ESG」も議論された(都内、3〜5日開催のPRI in Person)
岸田文雄首相が3日、都内の投資カンファレンスで持続可能性を重視するESG(環境・社会・企業統治)投資の促進にふれ、7つの公的年金基金(資産90兆円規模)が、国連の責任投資原則(PRI)に署名する準備を進めることを明らかにした。

国連PRIはESG投資の原則を定め、2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名した。約2.8兆ドル(420兆円)、世界の8%に相当する日本での同投資の裾野が、新たな年金基金の署名により、さらに広がることを期待する。

近年はESG投資は金銭的なリターンを伴わないとの指摘も聞かれるようになった。米国では公的資金の運用に同投資を禁ずる州もある。ESGを左派的とする考え方が強い地域だが、大統領選が近づけば政治的な批判がさらに高まる可能性が大きい。

世界の金融の中心である米国の反ESGの潮流は見過ごせない。確かにロシアのウクライナ侵攻後は、温暖化ガスを排出する石油企業などの株式への投資が高収益を上げたこともあった。投資の目的がリターンの追求であることを改めて確認させた。

とはいえ、環境問題がビジネスに経済的な影響を与えるのは間違いない。世界気象機関(WMO)によれば、1970年から半世紀余りの間に、異常気象などによる経済的な損害は4.3兆ドルにのぼった。株主が企業に気候変動リスク対策を促したり、温暖化ガスの排出削減を求めたりするのは、合理的なリスク管理である。

社会問題も重要だ。労働環境の劣悪な企業は人権侵害を指摘され、消費者の評判を落とす。90年代の米ナイキは今も投資家に語り継がれる事例だ。

環境・社会問題が企業活動と密接に関わる以上、投資家にはなすべきことがある。

まず、温暖化などの問題に関する専門性を高めることだ。外部のシンクタンクなどと共同で気候変動に関する研究を進める米ウェリントン・マネジメントのような取り組みは参考になる。

また、現実を踏まえバランスのとれた視点も大切だ。英国でガソリン車の販売禁止時期が延期されたように、脱炭素の道は険しい。ESG投資家には、ネットゼロ社会の目標を見すえたうえで、脱炭素への着実な移行を後押しする役割を期待したい。