岸田文雄首相が臨時国会で、税収増を国民に還元する税制措置の検討を表明する。視野に入れるのは所得減税だ。だが、防衛費などを急増させ増税論議が避けられないなか、「減税」を目玉政策に据えようとする首相に、政権内から困惑する声が漏れる。
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17日夜、首相官邸。記者団から所得減税を実施する考えがあるかどうか問われた首相は「大胆な取り組みに踏み込みたい」と力を込めた。その直後から、官邸幹部らから所得減税をめぐるシナリオが発信され始めた。
「首相が税収増の還元策を検討するよう自民党の税制調査会に指示する。所得減税も否定しない」。ある幹部はそう漏らした。別の幹部は、23日にある臨時国会での首相の所信表明演説に「還元策の早急な検討指示」が盛り込まれることを明かした。
所信表明演説は、首相にとって政治姿勢や重点政策を訴える重要な見せ場だ。今月半ば、首相は演説内容について官邸幹部と意見を交わしながら「とにかく国民へのアピールが必要だ」と口にしたという。内閣支持率が過去最低を更新するなか、局面打開のアピール材料として演説に盛り込むことを決めたのが、今回の「税収増を国民に還元する税制措置」だった。22日投開票の衆参2補欠選挙に向け、負担の軽減に取り組む姿勢をアピールする政権の思惑もちらつく。