バンブーズブログ

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[社説]建国100年のトルコが担う役割


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/29 19:00
 
建国の英雄ケマル・アタチュルクの写真が飾られたイスタンブール市内(25日)=AP
1923年のトルコ共和国建国から、29日で100年を迎えた。トルコはこの間、人口や政治・経済など様々な面で存在感を放つ地域大国に成長した。

ウクライナ危機やパレスチナ情勢の緊迫など混迷が深まる現代において、地域の安定にトルコならではの役割を一層期待したい。

建国100年の日を大統領で迎えたエルドアン氏は、2003年に首相に就任し、14年に大統領に移った。憲法改正により象徴的存在だった大統領の権限強化と首相ポストの廃止を経て、20年にわたり最高実力者の座にある。

この間にトルコの国内総生産GDP)は3倍に増えた。政治の安定が経済成長をもたらしたのは確かだ。政教分離の原則の下で、イスラム教の価値観を守りながら成長を実現したトルコの経験はイスラム世界のモデルとなる。

北大西洋条約機構NATO)の一員でありながら、米欧と一線を画す外交の立ち位置も重要だ。ロシア、ウクライナ双方とチャンネルを持ち、黒海経由のウクライナ穀物の輸出に道を開いた。

ただし、政権の長期化に伴い、近年強まる強権的な色彩を見逃せない。軍との対立やメディアの弾圧は民主主義の土台を揺るがし、イスラム教色の濃い経済運営は失速を招く原因にもなった。

ガザ情勢では、エルドアン氏にパレスチナイスラム組織ハマス寄りの発言が目立つ。イスラエルとの対立をあおるのではなく、ハマスと対話できる関係をいかし、紛争の収束に努めてほしい。

トルコ共和国は第1次世界大戦後のオスマン帝国崩壊に伴い誕生した。今日の中東対立の根は、そのときの戦後処理にさかのぼることを忘れるわけにいかない。

アジアの東西に位置する日本とトルコは良好な関係を続けてきた。首脳が往来を重ね、最大都市イスタンブールにはボスポラス海峡にかかる橋や地下鉄など、日本企業が手掛けたインフラも多い。地域安定へ両国の連携による貢献策を今後も探る必要がある。