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2023/10/19 2:00
中国の不動産不況や地方の債務問題は出口が見えない=ロイター
中国経済の動揺はまだ収まっていない。深刻な不動産不況や地方債務の問題は出口が見えず、先行きに暗い影を落とす。習近平政権は不安を払拭するため、あらゆる手を尽くすべきだ。
中国の国内総生産(GDP)は2023年7〜9月に実質で前年同期に比べ4.9%増えた。4%台半ばだった市場の事前予想を上回り、政府が通年の目標とする「5%前後」に届いた。
中国経済には底打ちの兆しも出ている。9月の購買担当者景気指数(PMI)は6カ月ぶりに好不調の境目である50を超えた。これまでふるわなかった生産が持ち直しつつあるのが主因だ。
だが、楽観できる状況にはない。22年は上海などの都市封鎖で、経済は大きな打撃を受けた。23年は反動で成長率が押し上げられている面があり、それを考えれば中国経済の回復力は弱いと言わざるを得ない。
最大の懸念要因である不動産業の低迷は続いている。1〜9月の不動産開発投資は9.1%の減少となった。
不動産大手、中国恒大集団の経営危機は収束する気配がない。中国政府は幅広い取引先に影響が出る法的整理に及び腰だ。問題を先送りしているうちに、碧桂園控股などほかの不動産会社にも経営不安が広がっている。
中国で不動産業は、関連産業も含めればGDPの3割を占めるといわれる。中国経済がこの部門の不振を起点とする需要不足から、日本が経験したようなデフレに陥るリスクは消えていない。
不動産不況は、地方政府の財政難に直結する。土地使用権の売却による収入が減るからだ。債務の膨張が止まらない地方政府は、新たな景気刺激策を打ち出す余裕がほとんどない。
08年のリーマン危機後に打ち出した巨額の景気対策は、中国の債務問題を大きくするきっかけになった。習近平政権はその反省から、財政出動をためらいがちだ。
しかし、景気低迷の根っこに需要不足があるとすれば、中央政府が主導するかたちで消費刺激に軸足を置いた景気対策は検討する価値があるはずだ。
6月を最後に止まった若年失業率の発表は今回もなかった。何か隠しているのではないか。そんな習近平政権への不信も、中国経済の不安につながっている点は改めて指摘するまでもない。