#税・予算 #社説
2023/11/9 19:00
会計検査院の岡村院長㊧から22年度決算の検査報告書を受け取る岸田首相(7日、首相官邸)
会計検査院が国の2022年度決算の検査報告をまとめた。税金の使い方などに問題があると指摘したのは344件で、総額はおよそ580億円に上った。
前年の検査に続き、新型コロナウイルス対策予算のずさんな使い方が浮き彫りになっている。不適切な執行や予算の繰り越しが相次ぐのは看過できない。
たとえば変異ウイルスを検知するために配備された解析機器は8道府県が民間検査機関に導入した21台(計約5億8千万円)が一度も使われていないか、目的外使用しかされていなかった。
介護施設の感染拡大リスクを下げるため、居室の気圧を低くする簡易陰圧装置を設置する事業では必要なダクト工事が行われておらず、陰圧室としての機能がないケースが30件みつかった。
特にずさんなのがコロナ予備費の使い方だ。20〜21年度に関連事業に割り当てた約12兆6千億円を調べたところ、緊急をうたった事業の3割が年度内に執行されず、全額を翌年度に繰り越していた。
コロナ関連以外でも、ガソリン価格を抑制するために卸売業者に渡す補助金で過大交付がみつかった。ガソリンの国内販売量に応じて渡される仕組みだが、他の卸売業者から調達して販売した分にも補助金を出してしまう二重交付が3億6千万円余りあった。
危機対応を名目に野放図に財政支出を膨らませるのは、もう終わりにしてほしい。岸田文雄首相は検査院の報告を真摯に受け止め、信頼回復を急ぐべきだ。
検査では、新型コロナ対策として政府系金融機関が実質無利子・無担保などで中小企業に行った融資の不良債権が、22年度末時点で8785億円と貸付残高の6%に上っていることも分かった。
スピード優先の施策だったのである程度の副作用が出るのはやむを得ないものの、融資の焦げつきが国民負担に直結することも忘れるべきではない。債権を適切に管理するのと並行し、産業の新陳代謝を促す施策が必要だろう。