バンブーズブログ

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[社説]オーストラリアは中国と適切な距離を


 
 
#社説 #オピニオン #中国・台湾
2023/11/9 2:00
 
アルバニージー氏㊧は豪首相として7年ぶりに訪中し、習近平国家主席と会談した(6日、北京)=ロイター
オーストラリアのアルバニージー首相が豪首相として7年ぶりに中国を訪れ、習近平国家主席と会談した。新型コロナウイルスの発生源を巡り、一時は極度に悪化した外交関係の正常化で一致した。

両国の雪解けは地域安定には望ましい。ただ中国は強引な海洋進出、政治的に意に染まぬ国への経済威圧など、対外的な振る舞いに問題が多い。豪州は今後も適切な距離を保つべきだ。

アルバニージー氏は習氏と今後の貿易拡大への努力を確認したほか、李強首相とは中止していた年次対話の再開に合意した。

豪中関係はモリソン前政権が2020年、中国に新型コロナの発生源の独立調査を要求したため冷え込んだ。中国は豪産品に次々と輸入制限をかける報復に走り、閣僚間の意思疎通も途絶えた。

転機は22年のアルバニージー政権の発足だ。豪州は対話へかじを切り、中国も石炭、大麦などの輸入制限を解いた。10月にスパイ容疑で拘束していた豪州人記者を解放し、今回の訪中が実現した。

中国は豪州との関係修復により、米国がアジアや南太平洋で主導する対中包囲網にくさびを打つ狙いがある。習氏は加盟を申請済みの環太平洋経済連携協定(TPP)にも言及した。現状で加盟が実現する可能性は低いが、ほぼ同時に申請した台湾の交渉入りをけん制する意図はあっただろう。

一方、豪州にとって中国は輸出先の3割を占め、コロナ禍以前の観光・留学産業も支えていた。関係改善の経済的利点は大きい。

ただ中国が経済を人質にとるような外交姿勢を改める気配はない。東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出では、日本産水産物の輸入を全面禁止している。豪経済にとっても過度の中国依存の是正は引き続き課題だ。

対中関係について、アルバニージー氏は「反対すべきところは反対し、国益のために関与する」と述べている。中国の覇権主義の抑止へ、日本や米国は豪州との連携を着実に深める必要がある。