バンブーズブログ

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[社説]瀬戸際の1.5度目標に危機感を強めよ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/27 2:00
 
地球温暖化による自然災害は世界各地に悪影響を及ぼしている(11月のフランス北部の洪水)=ロイター
地球が取り返しのつかない局面に入りつつあることに、国際社会は危機感を強めるべきだ。地球温暖化対策を協議する第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が30日、アラブ首長国連邦UAE)で始まる。

21世紀末の気温上昇を産業革命前の1.5度以内に抑えることを目指している。スルタン・ジャベル議長は「目標は揺るがない」と語るが、達成は困難な状況だ。

世界の平均気温はすでに1.1度上昇し、9月は1.8度、11月17日には2度を超えた。一時的とはいえ、従来の予想を上回るペースで温暖化は進行している。

各国の対策が進んだとしても、今世紀末には2.5〜2.9度に達する見通しだ。すでに異常気象や自然災害など温暖化の影響は世界に及ぶ。経済や社会、生態系への打撃はより深刻になるだろう。

深刻な影響を減らすには、温暖化ガス削減をより進めなければならない。気候変動に関する政府間パネルIPCC)によると、温暖化ガス排出量を2035年に19年比で60%減らす必要がある。IPCCは「この10年の対策が数千年先まで影響する」と訴える。

COP28では、各国の対策の進捗を初めて検証する。再生可能エネルギーを30年までに22年の3倍に増やすほか、化石燃料の段階的廃止や途上国への資金支援の拡大なども議論される。

ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー情勢は一変し、脱炭素の流れも後退している。化石燃料を極力減らすことが第一の対策だ。資材価格の高騰や金利上昇も重なり難しい局面だが、太陽光や風力などによる再生可能エネルギーの導入を進めることが肝要だ。

二酸化炭素(CO2)を出さない原子力発電の安全に配慮した利用、住宅の断熱化など省エネルギーの徹底もカギを握る。CO2回収やグリーン水素といった脱炭素技術の普及への努力も要る。あらゆる手段を総動員すべきだ。

必要な資金は30年代初頭に年4.5兆ドルと現状の2倍を超す。民間資金も最大限活用し、脱炭素投資や途上国支援を強めたい。

昨年、エネルギー不足に直面した欧州が天然ガスを買い占め、途上国で発電所が停止した。自国優先では解決しない。COP28で各国が危機感を共有し、利害を超えて協調、対策を強化することを強く求めたい。先送りは将来世代への背信である。