バンブーズブログ

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【取材9か月】なぜ集まる? "トー横キッズ" 少年少女が明かしたことは…

【取材9か月】なぜ集まる? "トー横キッズ" 少年少女が明かしたことは…

2023年11月25日 18:55

ホストクラブや風俗店が軒を連ねるネオン街、新宿・歌舞伎町。その中心部に「トー横」と呼ばれる場所があります。ここに集まる若者たちは、多くが未成年で、「トー横キッズ」とも呼ばれています。

高校生(15)
TikTokとかでネッ友に『トー横界隈来る?』みたいに誘われて『じゃあ行ってみるわ』って感じで来ました」
「自分が考えた理想の自分でいられるから。お互い楽しいし、居やすいから」

ネットで知り合い、トー横で仲間を増やす――。若者たちはこの場所で独自のコミュニティーを作っていました。

Twitter(※現X)やってる?交換しよう」「いいよ」と連絡先も気軽に交換。しかし、SNSで使うハンドルネームを名乗るため、お互いの本名を知らないことも多くあります。時には、危険な大人と出会うことも…。トー横をめぐっては、様々な事件もおきています。

こうした治安の悪化に警察は、定期的に一斉補導を実施。しかし、3日前に補導されたはずの16歳の少女は、すぐにこの場所に戻ってきていました。

なぜ、子どもたちはこの場所に引き寄せられるのか。私たちは9か月にわたりトー横を取材。子どもたちの声に耳を傾け続けました。
■「みんなと」「一緒に」…仲間と過ごすためこの場所に

 
私たちが取材を始めたのは3月上旬で、この日の最低気温は5度でした。厳しい寒さの中、多くの子供たちが集まっていました。一体、トー横で何をしているのか。

中学3年生(当時)
「ここでみんなとしゃべるのが楽しい」

高校2年生(当時)
「一緒にたばこ吸えるし、お酒飲めるし。学校の友達より楽しい」

中学2年生(当時)
「地元の先輩とかはめんどくさい。ここは年上とか関係なく話せるし」

多くが、トー横でできた仲間と過ごすためにこの場所に来ているといいます。しかし、飲酒や喫煙をする子どもも多く、非行の温床にもなっていました。中には神奈川や千葉、埼玉など周辺の県から電車で1時間以上かけて来る子どもも。この日も50人を超える子どもたちが集まっていました。
■母親の「LINEも消しました、昨日」「いらないんで」

 
5月、私たちはスーツケースを引くひとりの少年に出会いました。大阪から来た仮名・ユウト(15)。去年家出をして、およそ3か月間トー横で過ごしていたといいます。警察に保護され、一度家族のもとに帰されましたが、またトー横に戻っていました。

ユウト(仮名)
「わかってくれる人が多いから。関西とかは多くなかったけど、こっちは違うから」

生まれた直後に両親が離婚したというユウト。妹と2人で母親に育てられましたが、幼いころは母親から虐待を受けていたといいます。

ユウト(仮名)
「(母親は)殴る、蹴る、首絞めるとかって」
「嫌いではあるけど、何か“そこに感情を持っても”って感じ。LINEも消しました、昨日。いらないんで」

児童相談所などに保護されたこともありましたが、最後に選んだ居場所は、トー横でした。

ユウト(仮名)
「全部“心配なんだ”とか一言で片付けられるのが好きじゃない」
「相談しても無駄だし、それならこっちで生きられるだけ生きてって感じ」
■広場から次々消える少女たち 向かった先は“案件”

 
6月、私たちは取材中にあることに気づきました。夕方過ぎ、ひとり、広場から離れる少女がいたのです。その後も少女たちが、次々と同じ方向に消えていきました。トー横にたむろしていた少女に、“向かった先”を聞くと…。

記者「何しに行ったの?」
少女「案件」
少年「仕事です。仕事です」

子どもたちが話す“案件”とは何なのか…。私たちは少女たちの行き先を追いました。向かった先は、トー横近くにある公園の前で、そこには多くの少女や女性が一列に並んでいました。

記者
「男性が女性に声をかけました」
「40代くらいの男性です」
「2人で歩き出しました。親子ほど年が離れていますね。」

この女性は男性とともに街の奥へ消えていきました。
■17歳ミノリは「自分さえ我慢すれば今の生活を…」

 
公園に並んでいた少女の一人、都内の高校に通う仮名・ミノリ(17)に話を聞きました。去年12月からトー横に来るようになったといいます。

ミノリ(仮名)
「“案件”(の意味)は援助交際ですね。交渉してホテルに行って…。大体1万5000円ですか」

“案件”、それは売春のことだといいます。ミノリは週に2回、トー横に来て売春行為をしているといいます。

ミノリ(仮名)
「親が家にいないことが多いんですけど、弟・妹がいるのでお金のやりくりが厳しい時があって始めました」
「ご飯は私が出してます。そのためのお金です」

小学生の頃に両親が離婚し、幼い妹と2人の弟とともに母親のもとに引き取られたミノリ。しかし、数年前から母親が彼氏の家に入り浸るようになり、週に1回しか家に帰ってこなくなりました。

ミノリ(仮名)
「ご飯は(自分で)作って行くこともあります。牛丼作ったり、チーズ牛丼にしたり」

生活費もほとんど渡されないため、ミノリは歌舞伎町で売春をして得た金で、弟と妹たちに食事を与えていました。

 
記者
「売春は嫌じゃないの?」

ミノリ(仮名)
「最初はすごい怖かったけど徐々に慣れますし。やっぱ怖い思いもしますけど、こんなことをしているのは自分だから誰にも相談できない」

記者
「(売春を)やめてほしいと思うけどやめるわけにいかない?」

ミノリ(仮名)
「私1人だったら友達の家に泊まって何とかできなくはないけど、弟妹がいるので…。厳しいです」

両親が離婚したころリストカットをしていたというミノリ。しかし、その手首には新しい傷痕もできていました。

行政などに相談するよう記者はミノリに伝えました。しかし、ミノリは「施設などに保護されれば弟妹と離れ離れの生活になるかもしれない」「自分が我慢さえすれば、いまの生活を守れる」とつぶやくと家に帰っていきました。
■“野宿する”…翌日に消えたユウト 仲間は「心配じゃないですね」

 
幼い頃に虐待を受け、大阪から来た仮名・ユウト(15)。生きるために万引きを繰り返しているといいます。

ユウト(仮名)
「人間としての常識とか、そういうのは完璧に失ったと思う」
「もうないんだよね 目標とか夢とか」

ユウトは野宿すると話し、シャッターのしまった地下街に消えていきました。

翌日、トー横を訪ねるとユウトの姿はありませんでした。そして、SNSのアカウントも消えていました。

トー横の仲間に聞いてみると…。

記者「どこ行ったか知ってる?」
少年「わからないです」
記者「心配じゃないの?」
少年「心配じゃないですね。どうせ生きているだろうって」

トー横から離れれば、仲間ではなくなる希薄な関係。翌日にはユウトのことが話題にのぼることもありませんでした。

そんな中、ユウトが大阪にいた時から連絡を取っているという少女がいました。ユウトは警察に連れていかれたと話し、彼の本名を私たちに教えてくれました。
■息子が「頑張れていないんだって…」暴力を

 
2週間後、私たちはネットの情報などをもとにユウトの家を捜し出し、大阪にある自宅に向かいました。

記者「ユウトさんのお宅でしょうか」
母親「そうです。(ユウトは)鑑別所にいます」

ユウトの母親が行方不明者届を出し、ユウトは警察に保護されていました。家出をしている間に万引きなどの非行を重ねたため、いまは少年鑑別所にいるといいます。

幼い頃から学校でトラブルが絶えなかったというユウト。母親は、問題行動を繰り返すユウトにたびたび手を上げていたといいます。

ユウトの母親
「ほっぺですかね。ほっぺを平手です」
「なまけているというか…。息子が頑張れてないんだって風に思っちゃったんですけど、息子の障害がわからなかったのでたたいてしまった」

実は、ユウトには発達障害がありました。母親はそれを知らず、“ユウトに周りの子供と同じようになって欲しい”と、厳しく当たっていたといいます。

ユウトの母親
「小学校に入ってすぐに、授業に座って参加できなくなってランドセルもカラで帰ってくるんですよね」
「何度も“先生に学校に呼び出されて怒られる”の繰り返しで、すごく嫌で、『何でちゃんとしないの』ってたたくようになった」

ユウトの母親は、子どもに暴力をふるってしまう自分に「このままではいけない」と感じ市役所などに相談しました。しかし、繰り返してきた暴力の影響で、ユウトは小学2年の時、情緒障害にもなりました。

そして、ユウトは7歳の時、治療のためひとり施設に預けられました。4年間に及んだ離れ離れの生活。その間、ユウトの母親は“あること”を続けていました。

ユウトの母親
「毎日話しかけたいなと思って、毎日送り続けました」
「捨てたら怒るんで置いてるんですけど…。ラブレターです」

返信はほとんどありませんでしたが、家に戻ってきたユウトは手紙を大事そうに残していました。
■「私じゃない人に育ててもらって、立派に歩いていって欲しい」

 
ユウトは、中学生になり思春期を迎えると家出を繰り返すようになりました。勉強についていけなくなり、学校にも行かなくなったといいます。そして去年11月、進路を巡って口論になり、家を飛び出したユウトはトー横に行きました。

3か月後、保護された時には別人のように変わっていたといいます。

ユウトの母親
「たばこやお酒や色んな悪いことを覚えて帰ってきた」
「前より手がつけられなくなった。怒りやすくなった」

家に帰ってきた4か月後、ユウトは再び家出し、トー横で私たちと出会いました。

1週間後、ユウトは警察に保護されました。そして、非行を繰り返すおそれがあるとして少年審判を受けることになりました。その中でユウトは、母親と暮らすことを拒否したといいます。母親もまた、息子と暮らすことをあきらめていました。

ユウトの母親
「自分ができることとやってきたことを振り返ると、どれだけ愛情をもっていても息子にとってはいいように働かない」
「許せない人と向き合い続けるのではなく…。私じゃない人に育ててもらって、立派に歩いていってほしい」

2週間後、ユウトは少年院に行くことが決まりました。少年院を退院した後の受入先は、まだ決まっていないといいます。
■「心の許せる友達が欲しい」 さまよう子どもたち

 
10月、ユウトのいなくなったトー横を訪ねると、そこにはいまも多くの子供たちが集まっていました。

この日出会った仮名・アカネ(16)は、裕福な家庭で育ちましたが、幼い頃は母親から虐待を受けていたといいます。

アカネ(仮名)
「家帰るたびアザ増えるし、最初は(母親が)殴るだけだったけど、小学生からご飯もなくなった」
「習い事もやらされてるし 高いお金のかかるのを。だから他人に(虐待を)信じてもらえない」
「幸せとか知らないし、何が幸せかもわからない」

アカネは虐待が無くなった今でも、「親を許せないから、家に居るのがつらくなる」「学校は楽しいけれど、もっと心の許せる友達が欲しい」と話すと、仲間たちのもとに戻っていきました。

居場所を求め、さまよう子どもたち。救われる未来はあるのか。大人たちが問われています。

(11月23日放送「QUESTION!#みんなのギモン」より)
●あなたの身の回りの怒りやギモンをお寄せください。

お寄せいただいた情報をもとに日本テレビ報道局が調査・取材します。


#みんなのギモン

https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html